8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 チャドが名前を呼んだ瞬間、石は光を放ちだした。驚いたアイラはオリバーにしがみつく。

『なに?』
「オリバー、何を持っているの?」
「何って、ただの石だけど。……前にここで拾った……」

ポケットに入れておいた石を取り出して見せる。
手のひらに乗せた白く軽い石。それを見てチャドが目を見張った。

『グロリア……?』
「え?」

 アイラもオリバーも、彼のつぶやきに目を見張る。

『オリバー、これって』

 リーフェがオリバーの体に触れた途端、白い石はまるで力を得たかのように、更なる光を放つ。力が吸い取られる感覚に焦りながらアイラを見ると、彼女もまた苦しそうに顔をゆがめていた。

「アイラ、これって」
「うん。この石が私たちの力を吸いとっている」

 周囲を覆うほど強い光があたりを包んだ。オリバーは眩しさに目を閉じる。
 次に開けた時、あたりは暗闇だった。否、正確には、森が広がっていた。先ほどとの対比で、暗く見えただけだ。

「森……?」

 戸惑うオリバーに、アイラが人差し指を立てる。

「しっ、これ、多分、この石が持っている記憶じゃないかな」

 不可思議なものが見慣れているアイラは、順応が早い。互いに手をしっかり握ったまま、ふたりは目の前に広がる光景を、息をひそめて見つめた。
 自分たちの目の前には見えない壁があり、そこを超えることはできなさそうだ。
 宙に浮いているような状態で、森に囲まれた土地を、やや上の方から眺めているような状態だ。
 突然、木々が揺れる。と思ったら、軽い身のこなしで、ひとりの女性が地面に降り立った。

『グロリア!』

 チャドが壁にぶつかりながら叫ぶ。それが、眼下に見える幻のような光景の中にいる女性を指していることは、その様子を見ていればわかった──