「……本当、お世話になりました」
と言いながら、私は怜さんにお辞儀をする。
「違いますよ。俺な、義數様の方に感謝をしないと怒るんやで?おら゛?」
「いや。その顔、されても……私、もう。諦めましたので」
「あ゛?」
「怖いですってば」
「……はぁ。わかりました。もうこの件は聞かないように致します」
「……わ、分かりました」
私はゆっくりとコクっと首を振る。
「では。私たちがいなくても……「大丈夫ですよ。」
私は怜さんの心配を遮って、大丈夫だと言う。
そして、靴を履いて、扉を開ける。
「では。……本当にありがとうございました」
と言いながら、私は王政さんの大きな家を……魔王様の城を出て行ったのだった。
そのとき、怜さんは何も言わずに、扉が閉まるまで私にお辞儀をしていたのだった。
バタッン!
その大きな音が私の耳に響いて、ビクッと私は肩を震わせる。
早朝だったので、朝日は空から昇ろうとしていた。
その朝日が綺麗で、見惚れるほど。
……だったけど、灯の家行かなきゃ。
何時に待ち合わせだっけ?
私は携帯でメッセージアプリを開く。
そのメッセージアプリは……王政さんが作ったアプリだ。
王政さんの作ったアプリはどれもすごいと灯から評判を受けている。
私はそのメッセージアプリを王政さんが作ったとも知らずに日常的に使っていたから、灯から聞いて知ったとき、びっくりした。
だし、メッセージアプリの口コミの星の数が4.5だったし。
……というか、みんな知っていたアプリだったから。
創業者だなんて知らなかったしね。
じゃなくて、何時だったっけ〜なぁ〜?
と思いながら、灯のメッセージのやりとりをしているところを押して、何時に待ち合わせかを確認する。
あっ。まだ時間めっちゃある。
灯と会う時間は……8時前だった。
今の時間。
はい。……6時前です。
2時間もあるけど。
理由は、私が言ったのだ。……王政さんに会いたくないから。
そんな理由で?と思うが、心の中が何故かチクチクするし、見てると胸が苦しいし。
……怜さんに私の都合を言ったら、「全然OKです」とにっこりと笑顔で言ってくれた。
……灯、楽しみにしてるかな?
……まぁどっかで、朝ごはん食べるか。
お金は……安いのしか食べれないから、ファーストフード店で食べよう。
と思いながら、荷物を肩にまた掛け直して、灯の家に向かいながらもファーストフード店に向かっていた。