首に何かが付け終わると、王政さんは。
「……おやすみ楓」
と言って、私の部屋を出て行った。
……その言った声と裏腹に。
「じゃあね楓」と言っているようで。
そこから私は、自分の足が立ち上がらなかった。
自分の首に付けられたしるしを触りながら、王政さんが去る後ろ姿を見ていた。
恋は儚いのかもしれません。
と自分の部屋で思いながら、パジャマを着ていた。
そして、ベッドで寝る。
そのベッドが。
匂いが。
王政さんの匂いで。
ぎゅうとシーツやタオルケットを自分の両手で握りしめる。
王政さんが私の背中の後ろにいるかのように。
もう。私が王政さんのところから……いなくなれば。
私の、儚い恋は終わりますよね?
魔王様。
と思いながら、目を瞑って私は寝ていた。
そのとき、1粒涙が自分の瞳から出ていたのかも…………しれない……。