恋……かぁ。






恋……ねえ。







恋。




恋。

恋かぁ〜。
と思いながら、夜道を歩いて行ったら。

あっ。着いちゃった。
……もう王政さんのお家へ着いてしまったらしい。


「ただいまでございます〜」
と言って、扉を開けてみたら。

「いない」

いなかった。

いなかったら良いんだけどね。
少しだけ安心が心の中であった。

夜ご飯は学園で食べたし……寝るとするか。
と思い、少し沈黙が終わった後、私は階段を上り、自分の部屋の扉を開ける。

部屋の中を見渡すと段ボールが床に詰んであって、服や下着などを怜さんが詰めてくれたみたいだ。
「ありがとうございます。」と感謝しながら、部屋を入ると。



いたよ。


王政様が。


そう。王政義數が私のベッドで綺麗にぐっすりと目を瞑り、寝ていた。
綺麗な寝方だ。

まつ毛が長く、少しだけ可愛くもあり、セクシーな寝顔。
他の人が見たら、すごく気絶するだろう。

私は…大丈夫だ。
きっと。

と思っていたが、私は吸い込まれるように、バッグを床に置き、王政さんが寝ている私のベッドへ行く。

綺麗な黒い髪。ストレートの髪が部屋の明かりでツヤが浮かぶ。
その髪を無意識に私の片手が動き、触ってしまう。


「魔王様は……幸せになってください」


と言い終わったとき。



パシッ!!

部屋の中に響く、私の腕を掴む音。
それと同時に目が一瞬にして開く王政さんの瞳。


「なれねえよ、馬鹿か」


「……っ」

「お前がいねえと俺は生きてられねえけど?」

「生きてられてたでしょ!?」

「頑張って。頑張って。楓のことを思い浮かべながら生きて来たけど?」

「違いますよ……」と言いながら、下を向き。

花奈さんだと私の頭の中に浮かぶ。


もう花奈さんでしょ?私より……綺麗な顔の花奈さんだよ。
と思うと、涙腺が緩む。

……これはもう。好きなのに……なぜか、私じゃ釣り合わないと自分で確信しているし。


「好きだよ。楓」

「私は嫌いです」
と最後は私の下唇を噛む。

「じゃあ……これだけ…やらせろ」
と言い終わったとき、私の腕を引っ張って、私の肩に王政さんの顔が落とされる。

そして。

「魔王って言え……この馬鹿子犬」
と言いながら、私の首に……

「……ひゃあっ!?」

しるしを付けていた。……それに気づかない私。

「んっ……。」
少し低いイケボな王政さんの声が私の部屋に響く。
それと同時、リップ音が響く。

その音と王政さんの声が私の耳の横に(じか)に聞こえてくるので、微妙な気持ちになる。


やめて……もう。

私を……「惑わさないで……」
涙腺が緩み、私の瞳から涙が出る。

「惑わすから……今日の夜だけ」
「……っ!!」
「いい顔」

にやあと笑ったその顔は、私の体を鳥肌をしたときと同じ気持ちではない気がした。


好きです。




って言いたいです……。