あ、あれ?
100万円以上で魔王様に結婚破棄してくれって一回だけ頼まれて……保留にされて。
また、花奈さんが来て……魔王様が止めて。
してない!!結婚破棄してない!!
……えっ?!あれ?!
「大丈夫?楓?」
私の頬を触って、私の顔を見ようとする魔王様。
……っここで、甘々魔王様は〜っ!!
私は気づいていないけど、私の心の奥底でドクンと鳴る。
「……ねえ。大丈夫?」
私に尋ねる魔王様。
「だ、大丈夫ですっ!!」
私はそう言ったと同時に、頭の中で花奈さんと話した時のことが思い浮かんだ。
平常心。平常心!
と思っていても、花奈さんと話したことが、頭の中で甦る。
『結婚破棄してくれないかしら?』
『えっ?』
何回頭の中に過ったことだろう。
結婚破棄。
結婚破棄。
と、というか、おじいちゃんが勝手に決めた婚約者だし!!
私が、大々的に廊下で結婚破棄しますっ!って言ったら、どうなるんだろう?
魔王様は?…花奈さんと結婚?
それはあるかも。綺麗な花嫁姿、見てみたいな。
だけど……花奈さんが怒るかも。
「おい。馬鹿子犬。いつまで、百面相してるつもりだ」
元に戻った魔王様。
そして、私は、
「へっ!?」
と変な声を出す。
「おい。馬鹿子犬」
「はいっ。」
「お前は……心の中で何を思ってるんだ?…言葉にして欲しい」
……っ。
「あーっと。魔王様が怒りそうな話です!」
…カンカンに!
なんて、私は芸能人で言う営業スマイルをしながら言う。
すごい大きい間が入っちゃったけど、
魔王様の瞳はずっと私の顔を捉えているようで。
「チッ…………本当か?」
「本当ですっ!」
「本当に見えないけど?」
俺様になったり、甘々になったり。
シーソーじゃないですか。魔王様。
私はボソッと小さな声で言って。
魔王様に聞こえていたのか、すぐに、「何を言った?」と私に返して来て。
「魔王様は……ずるいです」
「はぁっ?」
「大人で、芸能人で。手に届かない存在で。それに、御曹司だし。…イケメンだし。きっと、運動神経いいんだろうし。…中身は優しいし。かっこ良いし。キス…上手いし。守ってくれるし」
「ちょっと待て。待てってば」なんて言葉が私の耳には聞こえるけど、聞こえないフリをして。
「まぁ……待たないです。」
「……?…何をだ……?」
「結婚破棄……してください!!!ではっ!!!」
大声で、私は魔王様に伝えて、私の腕が魔王様の強い力の手で捕まえられない前に廊下をささッと逃げて行って、私のクラスのメイド喫茶まで少しだけ早歩きで魔王様のところを去って行った。
馬鹿かも。
本当の馬鹿子犬かも。私。
なんて思いながら、早歩きをしながら教室に向かって行った。