「お゛い゛。お前、楓といい感じになってたのに……壊す気か?」

いきなり、魔王様は低い声を灯に届ける。

こ、怖いい……!!

私は体がカチンコチンに固まる。固い氷のように。


だから、私は、魔王様のTシャツしか見えてなくて。
良い匂い……と思ってはいるけど。


そうでもなく。



魔王様と灯の仲介役を引き受けたい。



……が私の心の中では勝ってます。




「……あ、のー「ねえっ!楓!!これはどうなってんの?!祐美から聞いたら、ここにいるって……「あぁ。お前が来たから、ぶち壊しだ」


私の声を灯が遮って。

灯が言っていたことを、魔王様が遮って。


もう何が何だか……どう言えば良いのだろう。
頭が混乱して、何も言えないし、視界が見えない。



私は無意識に……

「ま、魔王様……」

と呼んでしまった。
呼んでいたとき、魔王様の肩が少しだけ、ビクッと震える。

「何?」

優しい声で私を訪ねる声は……少しいや、怖くて。


「…あ、あの。魔王様……そんな喧嘩してたら……文化祭が終わっちゃいます…」

私は魔王様の服を両手で掴み、魔王様を下から見ると。
魔王様の顔は。


目を一瞬開き、魔王様は片手で、自分の口を隠して。

私を見ないようにしている気がして。


私と魔王様の世界に一瞬、入り込んだ時。



「よしっ!今だ!!」

とガッツポーズをして、灯は、猪突猛進で私の方へ向かって来る。
向かって来るとき、ドドドドッと言う音を出していた。

私は、な、何?!とびっくりしてしまって、肩がビクッと震える。


「ねえっ!楓!どうだったの!?」
と魔王様の横から、私を覗く灯。


す、すごい……

「ま、魔王様の後ろから……「で!?どうなったの!?」

心の中で言おうとしたことが、口に出ていたけど、
すぐに、灯に遮られ。

私の頭の中は、怜さんのことになっていた。


「……OKもらったよ?」



「ありがとう!!さすがは、楓様!!えーと。執事様は?」
興奮しがちで私に聞く灯。

「楓……どうなの!?」というオーラの灯の顔が、
私の視界ではどアップになって。


「いるよ?……魔…じゃなくて、王政さんの後ろに」

私は後ろを振り向いて。
執事さん…ではなく、怜さんがいる方向へと指を指す。


「はい。楓様……お呼びですか?」


スッと私の隣に行く怜さん。

本当に……金盗めそう。
なんて考えてる暇ではなく!


「は、早く行かないと……だよ!!魔…じゃなくて、王政さんが怒り寸前かも…!」

私は、小声で、灯に囁く。


「分かった!……私は…塔堂灯です」

「はい。楓様から名前を受けています。」
少しだけ、灯にお辞儀をしながら、言う怜さん。


「……綺麗なお辞儀…あっ!案内しますね!」

見惚れていたのか、灯は声が零れながら、
怜さんを付いて行かせていた。

そのとき、怜さんは少しだけ、目を開いていた。




「行ってらっ……「お゛ い゛」

「はいっ!お呼びですか!!」

「一目が付かないところに行くぞ」

「はいっ!って…えっ!?」
無意識に言った、「はい」。

それが、元凶です。

また……昨日のようにはならないよね?!
と思っていたときには、魔王様は私の腕を掴んで、小走っていた。