「お願いしますっ!!!」
私は綺麗なお辞儀をして、怜さんにお願いする。



「……はぁ〜。わかりました。」

頭をクシャクシャしながら、片方の手でネクタイを緩めた怜さん。

そして。


「本当ですか!?」


『良い』と怜さんが打診してくれた。



「ありがとうございますっ!!」

私は怜さんを最初に見て。
お辞儀をして、感謝していた。


「まぁ後……きっと、褒美賞のためだと思います。……すいません…」
また、私は謝りながら、理由を話す。


「良いですよ……まぁ、義數様の婚約者でありながら……
義數様がだいだいだい…「それ以上言うな、よ゛?」

ん?


だいだいだい……?

何それ?
……なんか、口の体操?

怜さんがそんなことをするとは……思えないし……。



まぁいいや。
だって、それより………

私は、少しだけ、頭に冷や汗をかきながら、魔王様をゆっくり、
魔王様の足から顔へと見上げる。

魔王様の顔を見ると、すぐに察した。



魔王様のオーラがやばい!!!

と。………隠しの服を着ているけどさ!!



「あ、あの……では、怜さん、そのままで、私の教室に来てください。『塔堂灯』の名前を出せば、すぐ、準備してくると思います。服はそのままで。」


私は、怜さんに説明して……私が怜さんの腕を掴んだ。

だけど、掴んだとき、「ちょっ……楓様……!」と怜さんが言ったのは。

私の耳には聞こえなくて。
私が、教室を案内しようとしたら。



「待て」



魔王様のドスの効いた低い声が私の耳に響く。

きっと、怜さんの耳にも響いているであろう。


だって………私の腕を強く掴みながら、言ったんだから。

私の近くにいた人はそりゃあ聞こえますもの。




「な、なんですか?」


私は、最初に腕を掴んでいる魔王様の手を視界に映し、
そして、魔王様の顔を見ると。



「……何故、執事ごときの腕を掴む?」

と言ったとき。……私の視界には。


まるで。



本物の魔王様が……嫉妬しているみたいに映っていた。





「へっ?」



なんでって……。


「教室を案内しようかと……「ダメだ」

理由を言おうとした途端に、遮るし。


「はぁっ!?」


魔王様は拒否権をお持ちでございますよ。


どう致しましょうかね?私、秋風楓?

いや、魔王様を「妥当」と言わせる案が……。


今…全然、思いつかねえーーー……!!


私は眉間にシワを寄せながら、考えていたら。


「……はぁ?じゃねえよ。馬鹿子犬」


出た。


出たよ。


私を馬鹿にするor魔王様が俺様になるときだぞ……!!

やばいやばい。


「……俺を連れてけ」

なんか、魔王様が駄々捏ねキャラになったぽい。


「嫌ですぅー!もう分かるでしょ?魔王様は」

そして、私も?

なんて。


「分かんねえよ。俺、方向音痴だし」


あれ?…また、ムスッとした。

今日は、魔王様がムスッとする日?



「ええー?!というか、腕、解いてください!!」

私は魔王様が掴んでいる、自分の腕を左、右に振る。


解け……!!解け……!!
と思いながら、また、左、右に振っていると。



「嫌だよ。馬鹿……怜の腕を掴んでいるまで、ずっと離さねえけど?」



また、「イヤ」という、拒否が私に下されました。


「へっ……!?」

私は魔王様を見ながら、変な声を出してしまう。

なんで……よー。

はぁ。

私は呆れながら、怜さんの方も見ようとして、怜さんの方に視界を向けると。


「楓様……どうか……!!」
と言いながら、なんとか圧で押し切ろうとする怜さん。

その圧が、「やめてください……!!」と言っているようで。

はぁ。
なんか……俺様の怜さんと正反対。



「……分かりましたよ」


「はぁ」とため息と吐きながら、怜さんの腕を離すと。


「……偉ーいですねー?馬鹿子犬」

だけど、魔王様はにやあと笑って。
まだ、私の腕を離していなかった。


「はいはい。褒めるのは良いから……というか、離して!」

やっと解かれる…!と期待感が心の中で増していたとき。





「イヤだけど?」





はっ?




また、魔王様が私のお願い、願望を拒否しました。



もうこれは夢だと思い、私は耳を触る。


それを見ていた魔王様は目を一瞬開いて、
私が耳を触ったことに気づいたのか、魔王様は。


「なんで、触ってんの?」


と質問しながら、私の腕を掴んでる手の反対の手を伸ばして。




私が触った私の耳を。



「ひゃっ………!」



魔王様の手によって、塗り替えられた。



「なんで、触ったの……かな?」

そう言いながら、魔王様の片方の手はまだ私の片耳をお触り中。

その手が……微妙で。

触ると思ったら。

触らないし。


触らないと思ったら。


触るし。


本当に微妙で。
変に、私の体がビクッと震えてしまう。


「……そっれは……耳を疑うって言うのがあるから。空耳って……って、もう耳を触るのをやめてぇ……っ!」


言っている途中にビクッと震えているから、
言葉の音程が上がったり、下がったりもあり、普通の声になったり。


「……可愛い顔してさ、本当、誘惑の顔だけど?」


「……っ誘惑って……魔王様の下僕が誘惑して……「良いんだけど?
……まぁ。楓だけだけど」

もう魔王様の返事が何もかも、早くて。

私の質問がすぐに消えてしまう。



「……っもう…やめ「ないよ」


柔らかいし。

良いんだったら、ずっと触っていたいんだけど?
と普通の声で、私に言って。


普通の声。
私と魔王様の近くにいる人は、すぐに気づく声だと思うし。

魔王様=有名人だから。


きっと、すぐ、気づく。



それをわざと魔王様はやっているとは私は知らずに。

魔王様は、廊下にいる人たちに見せびらかすように。

私の腕を引っ張って。
ポスリと私の顔は魔王様の胸はまり。

魔王様は私の耳へと近づけ。





「楓は……変態だね?」



と言う。



「……ちがっ!!」

私は魔王様の顔を見ようとするけど。


すぐ、魔王様の手が強く、私の顔を押して、胸にポスリとはまり、
戻ってしまう。

もう1回。


もう1回。


と魔王様の顔を見て、「違う」と言おうとするけど。
また、胸にポスリとはまり。

だからか、魔王様は。


「黙ってろ」


と命令口調で言って、私の視界を魔王様だけになってしまう。


だけど。

その声ですぐに、雰囲気が変わる。

「……あっ!!楓!!!いたーーーー!!!」



「もうっ!!!楓!!!探したんだから!!!」



灯!?


私は一瞬の隙を突いて、魔王様の体から覗くと。
メイドになっている灯が仁王立ちで大声を出していて。



灯……!!!
今入ると。


「どうだった!!!執事さんの打診!!」



大声で言う私の親友の少女は。

逃亡は出来ない。=逃げれない。

…そして、魔王様に死刑を言わされそうな予感がします。






【逃げれない人】