「……ひさ…しぶり」
私はペコっと少しだけ、頭を下げて、逃げようとしたら。
「逃げないで」
もう聞いたことがあるし。
早く逃げたい反応が、自分の頭に満杯になっている。
そう。
元カレだった。
あの元カレの性格が、変わってる……。
あんなチャラチャラしてたのに……。
『お前、俺と付き合ってよ』
今でも思い出したくないぐらいに。
『俺、お前ポイント稼ぎだと思ってたんだけど!?……気づかないってどれくらい鈍感だよっ!!』
……ポイント稼ぎ。
少女漫画とかでよく使われる言葉。
だけど……「もう。思い出したくないから。」
「……俺、お前が好きだって、自覚した」
「……っ。何それ?」
「中学のとき、女なんて、見た目しか見てねえんだって思って。軽い気持ちでお前に近づいてみたら。……可愛くて。だけど、中学の俺はポイント稼ぎに使えると思ったから」
「……だから、高校のとき、違う学校行って。自覚した。」
「……っ。いいから。そんなの。」
私はあの元彼の顔を見ると。
ひどいことを……呪いみたいに思い出す。
ポイント稼ぎ。
鈍感。
なんて、あいつと付き合わなければ、どれだけ良かったか。
もう。何もかも。
消し去りたい………の。
「兵雅……もう。消えて。」
私は、すごく胸がキューっと痛くなる。
そして、私は涙腺が緩み、涙が出てきそうで。
『俺と付き合って。』
かっこいい人から言われて、私は嬉しかった。
……すごく、毎日が楽しくて。
……独りぼっちだったのを救ってくれた人だったのに……。
「何で……ポイント稼ぎなんて……!」
「……っ。それはごめんって……」
「許されないってことは……「わかってるよ。楓」
「……っ…。バカ……「ごめんって。」
私は元彼の胸板に弱めな拳をぶつけながら言って。
こういうとき、かっこいい人は。
ずるくなる。
「俺、お前が……「好きか?」
遮った、もう1人の男の声。
毎日、聞いている声。
私は後ろを振り向くと。
「魔王様!?」
もう。分かっていた。
だけど、いないとも心の中でも少しだけ思っていたから、自分でびっくりしてしまう。
魔王様のプライベートの姿は。
帽子を深く被りながら、黒いマスクをしていて。
黒いマスクや、帽子を被っていても、俳優・御曹司オーラがだだ漏れしているくらいの背格好。
やっぱり、魔王様は身長が高いから。
見えやすいのかな?
と思っていたところ。
「何、勝手に取り戻そうとしてんだよ。元カレが」
そう、魔王様が言い終わったら、私の腕を強く引っ張って。
「ひゃっ!?」
引っ張っているとき、私は変な声も出て。
その私の変な声のせいで、みんなが振り向いて。
「ねえ!!王子様じゃない!?」
「嘘っ!?」
「というか、ねえ!秋風さんじゃん!!」
なんて、私たちが注目の的に。
やばい。これはやばい。
何で、こうなっちゃうかな……?
「……何、また、楓を好きにならせようとしてんだよ」
「………っ」
「お前は……楓を金輪際2度と見るな」
「……っ!!何で……!」
顔がすごく困り顔になる元彼。
「……俺の楓を泣かせた罪だ」
………っ!!?
私は魔王様をつい、見てしまう。
「いくぞ。楓」
私の腕をまた、強く、掴んで。
私を走らせて。
どこに行くのか分からないまま、私は、魔王様に連れて行かれた。
それを見ていた、人たちは。
「お姫様と王子様の誕生……!!」
「やばっ……!!」
なんて失神を起こしている人もいたりしていたり?



