ジャッポ〜〜ン!


浴槽の中からお湯が漏れる音がして、お風呂場に響く。

私はその音を目を瞑り、耳を澄ましながら、聞く。

お風呂に入浴剤を怜さんは入れてくれたみたいで。



はぁ〜〜〜〜。
やはり、この風呂の音、入浴剤は……



落ち着く〜〜〜〜ぅ!


私は大きい一息を吐きながら、心の中で叫ぶ。……だがそれが終わると。




お風呂の中が、だいぶ静かになる。

……静かぁ〜…。

と思って、お風呂が気持ちよく、私の目が寝そうな時だった。





「おい。馬鹿子犬、逆上(のぼ)せるなよ?」


お風呂から、洋服を着替える場所の扉の前で聞こえる、魔王様の声。



「はいっ!」

魔王様のお告げで、私は目が覚める。


逆上せそうだったから、言ってくれて、助かったぁ〜……!

私は、心の中で少しだけ安心の気分になる。



………だけど。

安心するのは、まだ、早い。




「よしっ……お前の背中流してやるから、入るな」




魔王様からの……言葉。


……ん!?


ハイル?


入る!?


……ちょっと待て待て!!

私には、受けいられません。



「待ってください!!魔王…「だから…義數って名前あるんだけど?」


「違う!違う!!……「入るぞ〜」


私の声がまるで聞こえてないかのように、お風呂場の扉が開く。


ガラッ。

その音は私の耳には聞こえずに。



バクバクッ。

心臓のが速くなる音は聞こえていた。



私は胸を両腕で隠して。
…だけど、助かったこともあった。


魔王様は、目を隠してくれたのだ。
そして、タオルを下半身に巻いて。


魔王様の体はすごく良い体つきで。
女の人が見たら、一瞬で好きになりそうなガタイの体。


「……思春期真っ盛りの私に…何を見せようとするんだよ!!馬鹿魔王!!」

なんて、言いたいのに、私の喉は声が出ない。



「ば…楓。ボディソープ取って」


「……いやです。」



「何?俺に……」
と言いながら、私の耳に近づいて。



「また、気持ちイイコトして欲しい?」



また甘い言葉を甘い声にして、魔王様は話す。



……っ!!


「良いです!!……ボディソープを出しますから!!」

私は片腕を胸で隠しながら、もう1個の手でボディーソープを取る。


「良い子。……俺さ、楓の目の前にいる?」


「はい……」

私は魔王様の目が見えないのにもかかわらず、コクっと頷く。


「じゃあ……」

と言いながら、私の首に……


「ひゃあっ!」


細い男の人差し指が微妙なさすりで触ってくる。


「……んー…良い声」


「……っ!」

「何?抵抗しないの?」

……できない。




出来ないよ。


あの、俺様は?王子様は?

……どこ行ったの!!!?


私は、雰囲気、空気に流されそうで。


「し…な……い…というか、背中!!洗ってください!!」


私は、胸を隠しながら、話を切り替える。





「……いやだ。もっと、イヤらしいコトしたくなった」

私の耳の真横で言いながら、耳を喰(は)む。


「ひゃあっ!?」



お風呂場なので、やけに、私の変な声が響いてしまう。



「ねえ……楓を逃さなくなっちゃうんだけど?」



「……っ!!ダメで…「はい。はい。洗うよ」


やっと、俺様魔王or甘々魔王を説得出来た。

魔王様は、ボディーソープを手に泡を出して。

私の背中を洗う。



「……っぁ。」

洗っている時、私が変な声を出しても。

「………」

沈黙で。


「あの……魔王様?目隠し、取っても良いですよ?」

そう私がOKを出しても。



「………」


沈黙で。




沈黙が終わったのは、私の背中を流してくれていた時だった。



やばいことを言ったのは。




「これ。お仕置きじゃないから。……お仕置きはデザートの後ね?」




「えっ!?」
私は、驚き過ぎて、魔王様の顔を見てしまう。……だけど、眉毛、目が見えなくて。

何かしらの顔をしてるのはわかるけど。

本心の顔が…目、眉毛が見えないから。



わからない。


「……はい。流し終わった。…俺も楓がお風呂上がったら、入るから」


「分かりました。」


私の体温は。

逆上せて、上がっているのではなく。


俺様魔王の言葉、声、体で。


私の体温は爆上がりしていた。