咲き誇れ、麗しい華。

グラウンド脇の倉庫の前にて。

怒号を浴びながら同じ振りを何度も繰り返す。



「あぁもう、なんでできないのよ。さっき見てたならわかるよね?」

「フラフラしない! 重心をもっと下に落とす!」

「あんた小さいんだからもっと大きく動いて!」



周りに人がいるのにも関わらず、鬼の形相で怒鳴り続ける真子。


うるさいなぁ! 真面目にやってるよ!
サボってるわけじゃないんだから、そんなに怒らなくてもいいじゃん!


いつもの私だったら、そう強気で言い返せるのに。

怒鳴られるたびに全身が萎縮して、頭がパニックになって、思うように手足が動かせない。



「おい仲原、いくらなんでも厳しすぎだ。つーかお前、最近おかしいぞ? こないだ外で会った時も……」

「口動かす暇があったら指導してよ。本番まで時間ないのわかってるでしょう?」



見かねた大隈くんが間に入るも、バッサリと吐き捨てて、私をギロッと睨みつけてきた。


大隈くんの言う通り、他の子と私とでは明らかに態度が違う。

表情も話し方も声色も、豹変レベルと言っていいほど。


でも実際、当日まで1週間切っている。

それに私は、新しい振りつけが追加された日に休んでしまったので、みんなよりも一歩遅れている状態。


復活した後に急いで覚えたけれど、一気に頭に詰め込んだせいか、正直まだあやふやな部分があって。

順番を間違えたり、振りを1つ飛ばしてしまうことがよくあった。


みんなが揃ってる中で1人だけミスするのは、見栄えが良くない上に、悪目立ちする。

毎日頑張ってるのも知ってるし、いい成績を残したいって気持ちもわかる。


けどやっぱり、集中攻撃されるのは……。


結局その日も、重々しく張り詰めた空気で終わった。