咲き誇れ、麗しい華。

楽しそうに近寄ってくる彼らから守るように、大隈くんが間に入ってくれた。

だが……もう遅く、掴んでいた腕を振り払われてしまった。



「おい仲原っ、待てって。親友なんだろ? 話くらい聞いてやれ」



精神ギリギリの私の代わりに、大隈くんが肩を掴んで呼び止めてくれた。


私はダメでも、応援団仲間の彼なら、反応してくれるかな。


なんて、淡い期待を抱いたのもつかの間。



「親友? 私に親友なんかいないんだけど」



一瞬にして場の空気が凍りついた。



「な、仲原っ、お前、何冗談言ってんだよっ」

「そうだよっ。ほら、ちっこいけどここに──」



引きつった顔で真子に話しかける彼らを押しのけて、教室を飛び出した。



『私に親友なんかいないんだけど』



数日ぶりに聞いた声は、抑揚がなく、人情を感じられないくらい冷めきっていた。

すれ違う生徒たちに不思議そうな顔をされながら階段を駆け下りる。



「っ……ううっ……」



保健室のドアを開けて、ベッドに一直線。
カーテンを閉めてうずくまり、嗚咽を漏らす。


数年間築き上げた友情が、ガラガラと音を立てて崩れていく。


もう、2度と戻れなくなっちゃった……っ。


私はこの日、親しい友を失ったのだった。