「──はい、これ。俺らからの餞別」

「わぁ、可愛い。みんなで作ったの?」

「おぅ。俺は生地担当で、凛華がデザイン担当。縫製は麗華ちゃんが担当してくれたんだよね」

「はい。と、お花です」

「転校先でも頑張りなさいよー」



桜が満開を迎えた3月最終日。

引っ越しのトラックが停まる仲原家の前で、凛華先輩と一緒に花束を渡した。



「最後の最後にサプライズされるなんて。ありがとう。すごく嬉しい」

「気に入っていただけて良かったです」



色とりどりの花束を抱えながら、満面の笑顔で御守りを見つめている。


3人で秘かに作り上げた、ちりめん素材の赤い御守り。

表にはサッカーボール、裏には「勝利祈願」の文字が。

勉強と部活、両方上手くいきますようにと、一針一針思いを込めて縫い上げた。


そんな愛情たっぷりの御守りの中には……。



「にしても、やけに分厚いな。なんかカサカサ音もするし。何か入ってる?」