でも、晴樹はその頃から遠くの高校に行くんだっていうのは決めていて……。


 だから、このお付き合いは卒業までの期間限定のものってことにした。


 晴樹は不満そうだったけれど、でもだからと言って夢を諦めることも出来ないからと納得してくれた。

 そのときはそれが一番だって思っていたのに……。


 晴樹のこげ茶色の目と視線を合わせる。


 自分から言い出したことなのに、カウントダウンが始まってしまった今になって、別れがたいと思っちゃうなんて……。


「それでその……俺らの付き合いってあと一か月だけってことになるけど……」
「……うん」

 晴樹が何を言いたいのか分からないけれど、わたしは彼の言葉に同じ返事しか出来ない。

 寂しいっていう気持ちが、冬の風のように心の中で吹き荒れているから。


 でも、続いた晴樹の言葉にその風も一時止まった。


「思い返してみるとさ、俺ら恋人っぽいこと全然してなくねぇ?」
「え?」

 聞き返しながらわたしも記憶をたどってみる。


 付き合い始めてすぐに本格的な受験勉強がはじまった。

 そのため、一緒に勉強したりこうやって一緒に帰ったりはしたけれど、デートの一つもしていない。