「あのね、晴樹――」

 コンコン

「ジュースとケーキ持ってきたわよー」

「あ、ありがと。母さん」

 立ち上がった晴樹はドアを開けてジュースとショートケーキの乗ったお盆を受け取ると、それを小さなローテーブルの上に置いてまたわたしの隣に座った。


「で? なにか言いかけてたけど……?」

「あ、いや……ちょっと何言おうとしたか忘れちゃった。はは……」

「そ? じゃあまず食うか」

「うん……」


 嘘。

 忘れたわけじゃない。

 でもタイミングを(いっ)してしまって言いづらくなってしまった。


 何とか、せめて好きだってことだけは伝えたいんだけどな。

 思い返してみると、晴樹の告白に「はい」とか「わたしからもよろしく」とかは言ったけれど、《好き》という言葉は口にしていなかったと思う。

 だから、それだけはちゃんと伝えたい。


 わたしはケーキを食べながら、伝えるためのタイミングを見計らっていた。