「ありがとうございます。あ、これ良かったら後で食べてください」

 そう言って手土産を渡すと、「わざわざありがとうねー」と言っておばさんはキッチンに戻って行った。


「……じゃあ、俺の部屋二階だから」

 晴樹は何だかソワソワしながらそう言って階段を上り始める。

 わたしもその後について行き、晴樹の部屋へ向かった。


「俺の部屋、ここだけど……別になんにもないぜ?」

 そうして開かれたドアを潜り抜けて見えたのは……。


「……見えない」

 寒い外から暖房の効いた部屋に入ったせいだろう。

 眼鏡が一気に曇った。


 もう! 冬はこれだから困るのよ。


 心の中で悪態をつきながら眼鏡を外して拭いていると、晴樹にジッと見られていることに気付く。

「な、何?」

 眼鏡を掛け直しながら聞くと、笑顔が返ってきた。


「いや……俺、美穂が眼鏡つけたり外したりしてるときの仕草が好きだなーって改めて思っただけ」

「えっ!? す、好きって……!?」

「外した後とつける前に髪を耳に掛けるだろ? その仕草が可愛いなって思ってた」

「そ、そうなの?」

 無意識にやっていたことだったから自分じゃあ分からない。