「……別れが辛くても、それでも会いたいって思うんだから……。仕方ないでしょ?」

 力なく言うと、穗積はいらないことを言ったと思ったのかな?

「あ、ごめん……」

 そう謝ったあと、気まずそうに「行ってらっしゃい」と言ってリビングに戻っていく。


 わたしは冬の風が心に吹くのを感じながらも、大好きな彼氏に会うため家を出た。

***

 ピンポーン

 何となく、覚悟を決めるように一呼吸おいてからドアフォンのボタンを押した。

 そのまま少し待つと、ドアフォンから声が聞こえるより先にドアの向こうでバタバタと音が聞こえてくる。


 予測してドアから少し離れると、丁度ガチャリとドアが開いた。

「美穂。い、いらっしゃい」

 明らかに慌てている様子に笑いが込み上げてくる。

 わたしはフフッと笑うと「お邪魔します」と控えめに告げた。


 中に入ると、キッチンがあると思われる方から晴樹のお母さんが来て出迎えてくれる。

「美穂ちゃんいらっしゃい。ゆっくりしていってね」

 晴樹のお母さんにはわたしたちが付き合っていることを特に話したことはないんだけれど、いつの間にか知っていたらしい。

 わたしは比較的早くお母さんには伝えていたから、もしかしたらわたしのお母さんから聞いたのかもしれない。