でも、穗積にまで気取られているとは思っていなかった。


「それなのにこうやってデートしてさ、なおさら別れが辛くならないのかな?って……」

「っ!」

 思わず息をつめる。


 最後だからこそ、思い出作りをしよう。

 そう思って、少しでも恋人らしいことをしようとハグしたりデートしたりしている。

 それ自体は純粋に嬉しい。


 でも、やっぱり別れを意識しないというのも無理な話で……。


 胸が高鳴るほど。

 晴樹の行動にキュンとするほど。

 彼の存在を意識するほど、それは同じくらい泣きたくなるほどの切なさになる。


 晴樹から告白されて付き合い始めたわたしたち。

 恋人らしいことを何もしていなかったこの半年弱。

 それでも、わたしはちゃんと晴樹のことを好きになっていたんだって……。


 ここ最近の触れ合いで、嫌でもそれを実感した。

 恋人らしく過ごそうとしなければ気づかなかったかもしれない。

 気づかずに別れて、ただ初めて付き合った人という認識だけで終われたかもしれない。


 でも、気づいてしまった……。

 以前よりも別れが辛くなるのは、もう避けようがない。


 でもだからと言って会わずに過ごすということも出来なくて……。

 結局、せめてもの思い出作りをしようってデートを楽しみにするしかないんだ。