そうしてから、わたしも今日の晴樹の格好について何も言っていないことに気付いた。


「えっと、その……晴樹も、今日はいつもよりカッコイイよ?」

 私服もそうだけれど、頑張って流行りの髪型にセットしたんだろう。

 いつもと雰囲気が違っていてカッコよかった。


 でも、ついでのような誉め言葉になっちゃったからちゃんと伝わらないかな? と思ったけれど……。

「そ、そっか?」

 照れ臭そうに頬を掻いて、笑顔を見せてくれる。


 わたしの言葉で喜んでくれている様子に、キュンとなった。


「そ、それじゃあ行こうか」

 そう言ってさりげなく繋いだ手を恋人つなぎに直す晴樹。


 指と指の間に晴樹の指が入っているってだけで、ものすごく恥ずかしくて照れ臭かった。

 ……でも、嫌なわけはなくて……。


 わたしたちは恥ずかしがりながらも、そのまま並んで水族館へと向かった。

***

 正直、水族館では何を見たのかあまり覚えていない。

 せいぜいがイルカショーが凄かったなぁってくらい。


 ほとんどのことを覚えていないくらい、晴樹のことを意識していた。

 つないでいる手に、その手を引く腕に、指の間に常に感じる、晴樹の存在に。

 恥ずかしくて、照れくさくて、ずっと意識していた。


 最後に、イルミネーションに彩られた水槽を巡りながら思う。

 今この瞬間が、ずっと続けばいいのにって。

 ……薄暗い中、ほのかに光る水槽の明かりに照らされた晴樹を見て、叶わない永遠を願った。