わたしを見ないで言うから、尚更不満は膨れ上がる。


「何よそれ、恋人つなぎしたいって言ったのは晴樹じゃない」

「そうだけど……でも街中だと恥ずかしいだろ?」

 チラリとわたしを見ただけでまた前を見た晴樹に不満は爆発した。


「分かった、もういいよ。せっかくおしゃれして頑張ったのに、何も言ってくれないし。早く水族館行こう」

 デリカシーのない晴樹は放っておいて可愛い魚に癒されよう。

 そう思って晴樹を追い越して先を歩く。


「え? お、おい」

 晴樹は慌てて引き留めようとしてくるけれど、もう知らないんだから。

 楽しみにしていた分、怒りも大きい。


 でも……。


「待てってば美穂!」

 恥ずかしいと言っていた手をつないでわたしを引き止めた晴樹は、「ごめん」と謝ってから真っ直ぐにわたしを見る。


「美穂があんまりにも可愛くて直視出来なかったんだ」

「え?」

 真剣に告げられて、嘘や冗談じゃないって伝わる。

 ドキン、と高鳴った胸の音で怒りも霧散するくらい。


「今日の美穂、本当に可愛い……独り占めしたいくらいだよ」

「っ! そ、そんなに?」

「ああ」

 頷かれて、ドキドキと鼓動が早まる。