パンを除いてクリスマスディナーで作った料理はサラダとスープ、そして肉料理の3品、曲がりなりにも1年間は料理をした身であるが、目の回るような忙しさでクリスマスの夜は優雅な晩餐(ばんさん)とは程遠いものとなった。
 そして洋食とは一転、和食の場合はこれが一汁三菜で5品になるのだが、なんちゃってディナーが関の山である私には毎食5品を人数分作って食べていただくなど到底できないだろう。
 買い出しはおろか、献立も立てられない。
 個人的に一汁三菜の食事をいただくことができるというのは、その品数を作るための献立と食料と作り手の器量が揃うからこそ可能なのではないかという回答に至るのだが、これを日々こなしてきた日本の皆さんには本当に頭が上がらない。
 今どき定食屋や和食専門店といった一汁三菜のごはんを提供する飲食店は多く存在するが、主婦や主夫の方や一人暮らしの方など家事をされる方は炊事だけでなく掃除に洗濯に家計簿にと家庭の色々を背負っているのであり、家族の人数分だけ仕事量がある。

 私は一人暮らしでそう広くない部屋で過ごしているので洗濯も掃除も楽であるが、一人暮らしを始めるまでに実家で美味しいものをたくさんいただいてきたおかげか食には(こだわ)りを持ちたいと張り切った節があった。
 初めて1人で作ったまともなおかずは何であっただろうか、(うつす)らとした記憶であるが、手羽元の旨煮であったような気がする。
 これは手羽元と調味料を鍋に放り込んで煮るだけのサルでもできるほど簡単な料理なのだが、私はこれを作った日から楽をして美味しいものを作ろうという方向に走るようになった。