小さい頃から知識を得ることが好きで幼稚園の頃の愛読書は図鑑、小学校の頃の愛読書は国語辞典であった。
 図鑑は今でも大切に実家の本棚に眠っている(はず)だが、果たして幼稚園児に図鑑の内容が理解できるだろうか。
 図鑑は「図鑑」と言うくらいだから長い文章の羅列というよりは写真や図解が多くて当然であるが、それでも私はどうして真剣に図鑑を読み漁っていたのか、今となっては全くもって理解できない。
 当時の一番の「愛読図鑑」は小学館の『きせつの図鑑』である。一体どんな書籍なのか、念の為この話を書きながら通販サイトの商品説明を読んでみた。
 そこには、小学校受験に、幼児のみならず小学生以上にもという文言が並んでいる。
 たった今、あの図鑑が幼児向けであったことが発覚した。
 幼稚園児でも問題なく読めるどころかむしろ幼稚園児のために作ったようなものである。
 幼稚園時代の私は巡り合うページにもれなくボールペンで線を引いたり練習したての平仮名を書いたりと熱心にその図鑑の内容を学んでいたようだが、小学校受験には挑んでいない。

しかし問題があるのは図鑑ではなく国語辞典のほうである。
 国語辞典は小学校に上がるときに両親から贈ってもらった。くまのイラストが描かれた箱に入った黄色い表紙の可愛らしい辞書は、その後6年近く持ち主の興味関心に晒されてあれよこれよとページを捲られ続けた。
 今ではそんな使われ方をした辞書が少々可哀想である。
 辞書は本来、本を読んでいて分からない言葉が出てきたとか、あるいは先生から調べろと言われて特定の言葉を引いてその意味を知るためのものである。