彼女は教科担当でクラス担任でもあったので非常にお世話になったのだが、私が授業前後やお昼休みに授業で習ったところや宿題の質問をすると、時間の許す限り、私が理解するまで何度も丁寧に教えてくださった。
 当時は数学はごく普通にできていたはずで、おそらく定期考査でも五十点は切っていなかったはずであるが、そこから数学の成績は低下の一途を辿るのである。
 高校二年になって教科担当が変わり、授業方法も大きく変わった。
 初の授業を終えての級友の感想は「ダルい」であった。
 まず教師の印象が良くなかったように思う。
 例によって数学に関係があるかないかの瀬戸際の長話が続き、肝心の授業内容は教科書にあるものをそっくりそのまま書いて喋っただけ。
 しかし宿題はかなりの量が出ていたような気がする。
 それから私を含め多くの級友が彼の授業ではいわゆる「内職」をするようになった。
 勿論(もちろん)、真面目に彼の話を聞き板書を書き写していた者もいたが、皆退屈していたように見えた。
 私も他の教科の宿題や、教科書の中でも授業で説明されているところの何頁も先のところの予習をしていた。
 そして試験前に死ぬ思いで授業内容を頭に詰め込んで定期考査に臨むのだが、あえなく惨敗し、三十二点であれば良いが二十八点というときもあり、もれなく追試をいただくということもあった。
 彼が教科担当であった二年間で、一度や二度は平均点が三十点を下回ったか何かで再試験があったような気がする。