狂った隣人たち

妙な体のだるさを感じながらどうにか着替えを済ませて階段を下りていく。


1階からは物音が聞こえてきているから、父親はもうとっくに帰ってきているのだろう。


母親のことをどう説明しようか考えながらリビングのドアを開けた瞬間、生臭い臭いが鼻を刺激した。


リビングにあったテーブルは脇にどかされ、中央に父親と弘人が座り込んでいる。


2人はドアに背を向けて座り込んでいるけれど、ときおりグチャグチャという水っぽい音が聞こえてきた。


「おい、なにしてるんだよ」


近づきながら声をかける。


その瞬間カーペットの上に血溜まりができていることに気がついて足を止めた。


頭の中は一瞬にして真っ白になり、体中が冷たくなる。


心臓はドクドクと早鐘を打ち始めて動くことができなくなってしまった。


「なにを……?」


一瞬でカラカラに乾いてしまった喉で聞く。


まさか、まさか、まさか。


一番最悪な事態を想像する。


この家に引っ越してきてから次々と起こっている家族異変を考えるとそうなることも不思議じゃないような気がした。