狂った隣人たち

くるみは祐次の制服のすそを握り締めて言った。


祐次の母親は上着もズボンも、後ろも前も血が滲み、怪我をしていない場所はないくらいになっているのだ。


2階から1度落ちただけじゃ、ここまでボロボロにはならない。


そう考えた瞬間嫌な予感が胸を掠めて、くるみから血の気が引いていった。


同時に祐次もなにかに気がついたようで、母親を引きとめる手から力を抜いてしまった。


母親はユラユラと玄関を入っていき、少しするとまたベランダから顔を覗かせた。


最初あそこに立っているとき、洗濯物を取り込んでいるのだとばかり思っていた。


だって普通そうだろう。


洗濯物か、ベランダの掃除か、そのくらいしか思わない。


しかし祐次の母親はベランダに出ると低い手すりを躊躇することなく乗り越えたのだ。


「危ない!!」


祐次が叫び、くるみが目をそらす。


次の瞬間、ドシャッ! という音が聞こえてきてくるみは体を震わせた。


うっすらと目を開けてみると地面に落下した母親が再び立ち上がろうとしている。


今度は右腕を骨折したようで、妙な方向に曲がっていた。


「なにしてんだよ! もうやめてくれよ!」


祐次が母親の体を抱きしめて止める。


「くるみ、救急車を!!」


言われてようやく我に返った。


そうだ、救急車を呼ばなきゃいけない!