狂った隣人たち

☆☆☆

隣を歩く祐次はあまり元気がなかったけれど、それでもくるみが一生懸命話しかけることに対してちゃんと返事をしてくれていた。


やがて2人の家が見えてくる。


その家が見た瞬間祐次は怯えを目の中にたたえて一瞬立ち止まった。


「大丈夫?」


「あぁ。平気」


そう言って微笑むけれど、その笑顔は引きつっている。


すぐに歩き始めたものの歩みはどんどん遅くなっていき、家の手前で立ち止まってしまった。


また玄関先に誰かの姿が見えているのだろうかと思ってくるみも視線をそちらへ向けて見たけれど、誰も立ってはいなかった。


「母さん、今日は大丈夫そうだ」


祐次の言葉に振り向くと、祐次は視線を上へと上げていた。


その先を追いかけて見ると2階のベランダで洗濯物を取り込んでいる祐次の母親の姿が見えた。


「本当だ、よかったね」


ごく普通の主婦の1日と言った様子の光景に安心する。


「あぁ、本当に――」


『よかった』と続けようとした祐次の言葉は大きな落下音にかき消されていた。