狂った隣人たち

「祐次、一緒に帰ろう」


放課後になり、隣に座っている祐次に声をかけた。


リオのおかげで元気を取り戻したくるみはすでに帰る準備が終わっている。


「ん……」


短く返事をしてノロノロと帰宅準備を始める祐次。


そんな祐次を見てくるみは自分の席に座りなおした。


「帰りたくない?」


「うん。まぁね」


自分の家族に降りかかっていることを思えば家に戻りたくなくても当然だった。


家に戻るとおかしくなった家族がいる。


くるみなら、どうすればいいかわからなくなってしまうだろう。


「やっぱり警察に通報する? そうすれば、保護とかしてもらえるかもしれない」


津田家では大神家の人たちを見守ろうということで意見が一致していたが、憔悴しきっている祐次をほっておくことはできなかった。


他の家の人たちは基本的に見て見ぬふりをしている。


あの家の人たちと関わるとどうなるか、みんな身にしみてわかっているからだ。


だから決して口出しなどしない。


でもくるみたちは関わってしまった。


あの日祐次を見た懐かしさから、くるみの方から声をかけてしまった。


でも後悔はしていなかった。