そんなことを言われたとは思っていなくて、一瞬頭の中が白く染まる。


そしてゆっくりと顔を上げて親友の顔を見つめた。


『なんだって?』


『無理だって言ったんだ。だってお前の家は……』


そこまで言って親友は口を閉じた。


そこから先はなにも言わなくても理解できた。


まさか親友がそんなことを言うとは思っていなかった。


衝撃が大きすぎてすぐに何かを言い返すこともできずに呆然としてしまう。


その間に親友はどこかへ行ってしまっていた。


親友が自分へ向けてそんなことを言ったのは、それが最初で最後だった。


後からあの時は彼女にフラれてむしゃくしゃしていたのだと説明され、謝罪もしてくれた。


それでも一生の中から親友という存在は消え去ってしまい、戻ってくることはなかった。


本当は自分でも薄々気がついていたのだ。


どれだけ勉強をしても、どれだけ頑張っても自分には無理なのではないかと。


それを突きつけてきたのが信じていた親友だった。


それから一生は医学書を読むことが完全にやめた。