「オスニエル様。もし今度、国王様が私を側妃に戻し、ジャネット様を正妃にとおっしゃったとき、受けてみてくださいますか?」
「は? 嫌だが?」
すごい剣幕で振り向かれて、フィオナは思わず笑ってしまう。
「ドルフに頼んで、時を戻すことを前提に考えています。ジャネット様がなにを目的としているのかわからないのですもの。どの時点で、彼女が目的を達成したと考えるのかが知りたいのです」
「俺は嫌だ。お前以外の妻などいらないといっただろう」
「ふりだけですよ? ちゃんと時間は戻します」
「それでも嫌だ」
こうなるとオスニエルは聞かないのだ。一本気で強情。かたくなに強国政策にこだわっていたのも、そのせいなのだろう。
話が進まないと思うのと同時に、フィオナはうれしかった。たとえ策略であっても、フィオナを裏切るつもりはないと思ってくれているということだから。
「わかりました。ではもう言いません」
「ドルフが時を戻せるのはたしかに便利だが、戻しすぎるな。もう一度最初から始めたとして、俺はまたお前を手にいられるかどうかわからない」
どうやら、ドルフに聞かされた『過去七回にわたってフィオナを殺した』という言葉が、彼は相当に気になっているらしい。
「たしかにオスニエル様絡みで殺されましたけれど、もうそこまでは恨んでおりませんよ? そもそも側妃になったとはいえ、今世以外はほとんど話もしたことがありませんでしたからね。あなたに個人として認識されていたかも怪しいものです」
「傷をえぐらないでくれ」
本当のことだ。こんな言い方はしたくないが、短期間に七度も人生をやり直していれば、こちらだって達観してくるのだ。



