* * *
後宮の部屋に戻り、ドルフが時を動かし始めた。途端に、何事もなかったように、物音が響いてくる。
「ふう。戻ってきたわね」
疲れ切ったようにソファに座るフィオナに、ドルフが耳をぴくぴくとさせて扉のほうを見る。
『休んでいる暇はなさそうだぞ』
ドルフの言う通り、すぐにオスニエルがやってきた。リーフェを見るなり笑顔を見せる。
「お、リーフェが戻ってきたのか?」
『オスニエルだー! 久しぶり!』
じゃれつくリーフェを、オスニエルはなんだかんだとあやしている。意外と相性がいいのかもしれない。
ひとしきりかまわれて満足したリーフェが、オスニエルから離れたところで、フィオナは切り出した。
「オスニエル様にお願いがあります。こちらの香水について、効能……というか、成分なんかを調べていただきたいのです。この花と、香水の成分が合致するのかも」
小さな香水瓶と、紫色の花を見せられ、オスニエルは食い入るように見た。
「ジャネットからもらったのか?」
「ええ、香水のほうは。この香りが精神に作用しているかどうかは、そういった研究施設で調べればわかることですし、結果さえ出てしまえば、販売の差し止めも可能です。この花は、先ほどドルフに連れて行ってもらって、ロイヤルベリー領で見つけたものです。リーフェ曰く、この花の香りで、動物たちの気も荒くなっているそうです」
「わかった。これはロジャーに頼んでおく」
ロジャーならば安心だ。細やかに気が付く彼ならば、ジャネットに気づかれる前にそれをやり遂げてくれるだろう。
フィオナはほっとして、ソファの背もたれに体を預けた。なんだか一気に疲れてしまった。
「それにしても、ジャネット様の目的はなんなのでしょう」
「正妃になることなのかと思って、ロジャーに調べさせた。だが、あいつの兄のロイヤルべリー公爵は野心がない男でな。とくに公爵家から強い申し出があったわけではなさそうだ」
「そうなのですか」
「それに、ジャネットと夫のブレストン伯爵子息は、仲はよかったそうだ。今も、命日にはかかさず墓を参るそうだし」
「そうなのですか?」
後宮の部屋に戻り、ドルフが時を動かし始めた。途端に、何事もなかったように、物音が響いてくる。
「ふう。戻ってきたわね」
疲れ切ったようにソファに座るフィオナに、ドルフが耳をぴくぴくとさせて扉のほうを見る。
『休んでいる暇はなさそうだぞ』
ドルフの言う通り、すぐにオスニエルがやってきた。リーフェを見るなり笑顔を見せる。
「お、リーフェが戻ってきたのか?」
『オスニエルだー! 久しぶり!』
じゃれつくリーフェを、オスニエルはなんだかんだとあやしている。意外と相性がいいのかもしれない。
ひとしきりかまわれて満足したリーフェが、オスニエルから離れたところで、フィオナは切り出した。
「オスニエル様にお願いがあります。こちらの香水について、効能……というか、成分なんかを調べていただきたいのです。この花と、香水の成分が合致するのかも」
小さな香水瓶と、紫色の花を見せられ、オスニエルは食い入るように見た。
「ジャネットからもらったのか?」
「ええ、香水のほうは。この香りが精神に作用しているかどうかは、そういった研究施設で調べればわかることですし、結果さえ出てしまえば、販売の差し止めも可能です。この花は、先ほどドルフに連れて行ってもらって、ロイヤルベリー領で見つけたものです。リーフェ曰く、この花の香りで、動物たちの気も荒くなっているそうです」
「わかった。これはロジャーに頼んでおく」
ロジャーならば安心だ。細やかに気が付く彼ならば、ジャネットに気づかれる前にそれをやり遂げてくれるだろう。
フィオナはほっとして、ソファの背もたれに体を預けた。なんだか一気に疲れてしまった。
「それにしても、ジャネット様の目的はなんなのでしょう」
「正妃になることなのかと思って、ロジャーに調べさせた。だが、あいつの兄のロイヤルべリー公爵は野心がない男でな。とくに公爵家から強い申し出があったわけではなさそうだ」
「そうなのですか」
「それに、ジャネットと夫のブレストン伯爵子息は、仲はよかったそうだ。今も、命日にはかかさず墓を参るそうだし」
「そうなのですか?」



