8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

 母親はおそらく、リーフェを守っているつもりだったのだろうが、結果として、リーフェは自分の力さえも理解できなかった。できあがったのは度を越した世間知らずだったというわけだ。

「子供たちが持つ能力は、自分たちの性質にももちろんよるが、加護を与えた聖獣の性質も影響する。これで、アイラとオリバーの力の質も見えてきたな」

 力の本質が分かれば、時々、突然怖がるアイラにも対応できる。

「あとねぇ、なんか、においが気になるんだよね」
「におい? たびたび言っているな。お前」

 ドルフに言われ、リーフェはしゅん、と耳を下げる。

「動物たちが、なんか喧嘩ばっかりしているの。ママに、ここの動物たちは守るように言われているのに。こまるよぉ」
「それって、香水のせいじゃない?」

 フィオナが、ジャネットからもらった香水を見せると、リーフェは不快そうに鼻を鳴らす。

「うーん。そのままこの匂いじゃないよ。でも混ざってはいるかな。それに、私が言っているのは、花なんだよ。この時期、あっちにいっぱい咲いていて。風に乗って漂ってくるの。昔はこ個までひどくなかったんだけど、いつの間にか増えていて……」
「花……?」

 ここは端だけれどロイヤルベリー領だ。だとすれば、ジャネットが精油を取る際に使っている植物もあるかもしれない。
 フィオナはドルフに頼んで、空を飛んでもらった。
 花栽培が豊富というだけあって、上から見れば、温室や花畑がたくさん見える。

「ほら、あれ」

 リーフェが視線を向けたのは、紫色の花だ。近づいてみれば、朝顔に似たろうと状の形をしている。嗅いでみると、少し甘酸っぱいような苦みの残るような香りがする。
 ジャネットが作る香水は、香りの大半は百合からとれたものだが、後から広がる香りはこれに近い気がする。

「この花はなんなのかしら。この香り、妙に胸がざわつくのよね」
『精神に作用するにおいもあるからな。フィオナや子供たちは、俺たちの加護があるから、ほかの人間よりは影響ないだろうが』

 そういえば、同じ空間にいても、オスニエルやローランドのほうが、感情の動きは激しあった。

「……そういうこと」

 アイラとオリバー、エリオットが影響を受けにくいのは、聖獣に守られているからだ。