「存在している、と最初から認識していれば、探すのはたやすい。だが、知らないのに察知するのは結構な力が必要だ」

 思い返せば、初めて会った時も、リーフェはすぐにドルフを見つけたようだが、ドルフがリーフェを見つけるのは手間取っていた。
 ドルフの力で時を止めている間も、軽々と動くことのできるリーフェは力のある聖獣であることは間違いない。
 彼女は母親とふたりきりで、この湖の森でずっと暮らしてきたのだ。ほかの聖獣との交流もほとんどない。彼女自身が、自分の価値を認識していない可能性は十分にあった。

「まずは整理しよう。お前にできて、俺にできないことがあるならば、それはお前の特殊能力だ」
「ほぇ……。え、えーっと」

 こうして、ドルフの質問にリーフェが答えるという形で、リーフェの能力をあきらかにしていった。
 基本的なものは風の力。そして、感覚的な察知能力。これはアイラがして見せたような、通常目に見えないものを察知する力だ。そしてもうひとつが。

「増幅能力……?」
「能力者の力をさらに増幅させる力だ。双子がお前の体の中にいたとき、氷の力が暴発しただろう。あれもこれで説明がつく。フィオナの能力を、双子のどちらかが増幅していたんだ」

 フィオナはハッとする。アイラの見ているものをフィオナに見せてくれたのは、オリバーだ。

「だとしたら、きっとオリバーだわ。あの子、私にアイラの能力を見せてくれたもの」
「おそらく、リーフェの母親は、お前のその素質を分かっているから、あまり多くの聖獣と引き合わせなかったのだろう。聖獣がいつかないオズボーン王国はいい場所だったろうな」
「どうしてぇ?」

 リーフェが素直に疑問を口にする。ドルフはあきれたようにため息をついた。

「利用しやすい力だからだ。力の弱い聖獣ならばお前を(つがい)にと欲しがるだろう」
「えー。でも、番なんていらないよ。ママがいればそれでよかったんだけどな」