「こういった髪飾りを作って楽しんでいたのですよ。私が作ったものを、ここにいるポリーという侍女が褒めてくれて、市場での販売を促してくれたのです。運よく売れ行きがよくて、だったらこの職人を育てることと、孤児対策を組み合わせればいいと思ったのです。そのきっかけをくれたのはサンダース商会ですね。ちょっとしたことから、いい出会いに恵まれて、ここまでやってこられました。だから、成功したのは私の力ではなくて、私にかかわってくれたみんなのおかげなのです」
「みんなで?」
「ええ。私ひとりではきっと、後宮で自分の趣味を楽しむくらいのことしか、できなかったと思います」
そうであればきっと、オスニエルともほとんど話すことがなく、後宮の片隅で、静かに人生を終えたのだろう。フィオナは運がよかったのだ。
「だから、人との出会いは大事にしたいと思っています。ジャネット様と出会えたことにも、なにか意味があるかもしれません」
フィオナがそうまとめると、ジャネットは寂し気に目を伏せた。
「……フィオナ様は、不思議な方ですわね。一国の姫でありながら、気さくに自分の気持ちを言葉にされるなんて」
「そうでしょうか」
「オズボーン王国の理想的な女性は、気高く凛としているものなのですよ。王妃様がそうでしょう?」
たしかに、イザベラ王妃はいつでも背筋が伸びているようなきっぱりした性格をしている。彼女が国王に泣きつくような姿は想像もできない。
「だから、自分の弱みは隠すものだと教えられてきました。自分の成功が、自分だけじゃなくみんなのものだなんて、なかなか言えませんわ」
「……では、私はやはり正妃にふさわしくないのでしょうか」
フィオナは目を伏せて言う。しかし、ジャネットは首を振った。



