「ジャネット様」
「こんにちは。ご家族でお散歩ですか?」
彼女はにっこりと微笑み、近づいてくる。香りがふわりと広がって、フィオナは少し息苦しさを感じた。
アイラは怖いのか、フィオナを見上げ、抱っことねだった。
そこに、ローランドが「私ではだめですか?」と言って手を差し出すと、アイラは「ローラン」と手を伸ばし、彼に抱き上げてもらった。
ジャネットはそれを静かに眺め、扇で口元を隠した。
「……いいわね。かわいらしい子供たち。私にも、子供がいればよかったのに」
ジャネットが目を伏せて言う。伯爵との結婚期間に、子をなすことはなかったのだろう。公爵家に戻ったのも、そういう事情があったのかもしれない。
「ねぇ、フィオナ様。私、本当にあなたがうらやましいのです。大国の王太子を夫にし、子供にも恵まれ、事業も成功させているんですもの。どうやったらあなたのようになれるのかしら」
昨日の行動を見ていれば、ジャネットはフィオナに悪意はあるのだろう。陥れようと思っているのかもしれない。しかし、いざ相対すると、フィオナは彼女にそこまで悪い印象も恐怖も感じない。
(むしろ、はっきり口にしているのよね。うらやましい、とか)
フィオナに直接反感を買うような真似をすることが、どうにも納得がいかない。
例えばフィオナがオスニエルに言いつければ、ジャネットだって立場が悪くなることもあるだろうに。
(自分が犯人だということも、隠していないような気がする。……なにを考えているのだろう。ちゃんと話してみたほうがいいのかもしれない)
フィオナは、ジャネットと向き合うことを決めた。怖いと逃げていてもなんにもならないのだ。恐怖心が湧くのは、正体がわからないから。だったらその正体を、暴いていけばいい。
子供たちをエリオットとローランドに任せ、フィオナはジャネットを伴い、一歩先を歩き始めた。
「……私が望んでいたのは、ただ、この国で居場所を作ることだけでしたわ。もとは敵国の姫ですもの。ここに来た当初は、後宮でおとなしくしていることしかできませんでした」
ジャネットの瞼がピクリと動く。興味をひかれたように、「それで?」と続きを促された。
「こんにちは。ご家族でお散歩ですか?」
彼女はにっこりと微笑み、近づいてくる。香りがふわりと広がって、フィオナは少し息苦しさを感じた。
アイラは怖いのか、フィオナを見上げ、抱っことねだった。
そこに、ローランドが「私ではだめですか?」と言って手を差し出すと、アイラは「ローラン」と手を伸ばし、彼に抱き上げてもらった。
ジャネットはそれを静かに眺め、扇で口元を隠した。
「……いいわね。かわいらしい子供たち。私にも、子供がいればよかったのに」
ジャネットが目を伏せて言う。伯爵との結婚期間に、子をなすことはなかったのだろう。公爵家に戻ったのも、そういう事情があったのかもしれない。
「ねぇ、フィオナ様。私、本当にあなたがうらやましいのです。大国の王太子を夫にし、子供にも恵まれ、事業も成功させているんですもの。どうやったらあなたのようになれるのかしら」
昨日の行動を見ていれば、ジャネットはフィオナに悪意はあるのだろう。陥れようと思っているのかもしれない。しかし、いざ相対すると、フィオナは彼女にそこまで悪い印象も恐怖も感じない。
(むしろ、はっきり口にしているのよね。うらやましい、とか)
フィオナに直接反感を買うような真似をすることが、どうにも納得がいかない。
例えばフィオナがオスニエルに言いつければ、ジャネットだって立場が悪くなることもあるだろうに。
(自分が犯人だということも、隠していないような気がする。……なにを考えているのだろう。ちゃんと話してみたほうがいいのかもしれない)
フィオナは、ジャネットと向き合うことを決めた。怖いと逃げていてもなんにもならないのだ。恐怖心が湧くのは、正体がわからないから。だったらその正体を、暴いていけばいい。
子供たちをエリオットとローランドに任せ、フィオナはジャネットを伴い、一歩先を歩き始めた。
「……私が望んでいたのは、ただ、この国で居場所を作ることだけでしたわ。もとは敵国の姫ですもの。ここに来た当初は、後宮でおとなしくしていることしかできませんでした」
ジャネットの瞼がピクリと動く。興味をひかれたように、「それで?」と続きを促された。



