8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2


「オスニエル。やはり側妃を正妃にしたのが間違いなのだ。正妃にはジャネットがふさわしい。側妃は側妃だ。分をわきまえてその座に戻るといい!」

 その叫びに、にわかに周囲が盛り上がる。それに、不機嫌をあらわにするのはオスニエルだ。彼も、いつもに比べてやや感情的になっているように見える。

「なっ、いくら父上でも、フィオナを傷つけることは許せません」
「お前は騙されているのだ」
「なにをどう騙されたというのです。フィオナは不本意ならがやってきたこの国で、未来の礎である子供たちを救うことに力をささげ、俺の子をふたりも生んでくれた。ほかになにを望む必要があるのです?」
「あの子たちには、帝国の血が足りないだろう!」
「そうだ、そうだ!」

 周囲の貴族たちも、国王に同調する。予想もしていない盛り上がりだ。
 ついに堪忍袋の緒が切れたように、オスニエルは大声を上げた。

「帝国の血に、そこまで意味があるのですか? だったら俺は、そんなものいらない! 父上がそこまで言うのなら、俺は王位継承権などいりません!」

 まるで売り言葉に買い言葉だ。フィオナは焦って彼を見上げる。

「オスニエル様?」
「いいんだ。フィオナ。お前の価値を認められないような国に、未練などない」

 オスニエルはそう言うが、彼の人生は、国を支えるためだけに費やされてきたのだ。生まれ育ち、心血を注いで尽くしてきた国を、そう簡単に捨てられるわけがない。それに、国王も周囲の貴族も、そんな彼を見てきたはずだ。なのに今、ひとりとしてオスニエルを止めようとする人間がいない。

「おかしいわ。……なにか変よ!」

 フィオナが叫んだ、その時だ。突然、周囲の動きが止まった。
 こんなことができるのは、フィオナが知る限りドルフしかいない。

「ドルフ……なの?」

 フィオナが恐る恐る声を出す。ドルフは夜会には出られない。当然、今起こっていることなど分かるわけがないのだが。
 周囲を見渡してみると、動いているのはフィオナとオスニエルだけだ。

「見ろ、フィオナ。あそこに」

 ベランダに、エリオットの金髪が動いていた。彼は、フィオナたちが動いているのを確認すると、手招きした。

「姉上、こちらに」
「エリオット、これはいったい?」

 オスニエルとフィオナは、止まっている人垣をよけてエリオットのもとに向かう。