やがて、ジャネットは香水を売り込みに、男性とも積極的に会話をし始める。
視線だけはジャネットを追いながら、フィオナも挨拶に訪れる貴族たちの相手をしていた。すると、先ほどまでジャネットと話していた女性貴族の間で、いざこざが起こり始めた。
「大体、あなた方は節操がないのですわ。ちょっといいものがあればすぐすり寄って」
「あら、リドル伯爵家だって、同じじゃありませんか。フィオナ様の髪飾りがはやったとたんにそれ
までと打って変わってすり寄るようになって」
突然始まった口喧嘩に、フィオナは慌てた。しかも内容が内容だ。普通ならば、心の中に押し隠しているような本音だろう。いくら酔っていたとしても、こんなことを公式の場で語るような迂闊な貴族など、そうそういないはずなのだが。
「私、ちょっと見てきますね」
オスニエルにそう言い、フィオナは仲裁に入った。これもホスト役の務めだ。
「酔ってしまわれましたか? よかったら、バルコニーにまいりませんか?」
仲裁に入られたふたりは、あからさまにムッとし、今度はフィオナに突っかかってくる。
「酔ってなんかいませんわ。フィオナ様」
「あら、フィオナ様はどんな手を使って、オスニエル様をたぶらかしたのかしら。我が国は軍事でこそ力を発揮する国ですのに、卑しい商人のような手法を使って」
言い合いをしている双方から、あからさまな悪意をぶつけられ、フィオナは驚く。
(おかしいわ、これ。なんでこんなに好戦的なの?)
驚いているうちに、後方で男性同士が騒ぎを起こしていた。先ほど、ジャネットが話かけていた男性たちだ。
「やめろ」
オスニエルが仲裁に入っている。が、普段ならオスニエルに恐れをなして歯向かってこない男性たちが、言い返しているのだ。
「そうだ。オズボーン帝国は力で生き延びてきたのに。変えたのはフィオナ妃だ」
「オズボーンの伝統を変えたのは、フィオナ妃だ」
「大体、他国の姫が、正妃になるなんて!」
悪意が、靄のように広がる。いつの間にかたくさんの人に囲まれていて、フィオナは身の危険を感じた。オスニエルも状況に気づき、人を押しのけてこちらに向かおうとしているのが見えた。
視線だけはジャネットを追いながら、フィオナも挨拶に訪れる貴族たちの相手をしていた。すると、先ほどまでジャネットと話していた女性貴族の間で、いざこざが起こり始めた。
「大体、あなた方は節操がないのですわ。ちょっといいものがあればすぐすり寄って」
「あら、リドル伯爵家だって、同じじゃありませんか。フィオナ様の髪飾りがはやったとたんにそれ
までと打って変わってすり寄るようになって」
突然始まった口喧嘩に、フィオナは慌てた。しかも内容が内容だ。普通ならば、心の中に押し隠しているような本音だろう。いくら酔っていたとしても、こんなことを公式の場で語るような迂闊な貴族など、そうそういないはずなのだが。
「私、ちょっと見てきますね」
オスニエルにそう言い、フィオナは仲裁に入った。これもホスト役の務めだ。
「酔ってしまわれましたか? よかったら、バルコニーにまいりませんか?」
仲裁に入られたふたりは、あからさまにムッとし、今度はフィオナに突っかかってくる。
「酔ってなんかいませんわ。フィオナ様」
「あら、フィオナ様はどんな手を使って、オスニエル様をたぶらかしたのかしら。我が国は軍事でこそ力を発揮する国ですのに、卑しい商人のような手法を使って」
言い合いをしている双方から、あからさまな悪意をぶつけられ、フィオナは驚く。
(おかしいわ、これ。なんでこんなに好戦的なの?)
驚いているうちに、後方で男性同士が騒ぎを起こしていた。先ほど、ジャネットが話かけていた男性たちだ。
「やめろ」
オスニエルが仲裁に入っている。が、普段ならオスニエルに恐れをなして歯向かってこない男性たちが、言い返しているのだ。
「そうだ。オズボーン帝国は力で生き延びてきたのに。変えたのはフィオナ妃だ」
「オズボーンの伝統を変えたのは、フィオナ妃だ」
「大体、他国の姫が、正妃になるなんて!」
悪意が、靄のように広がる。いつの間にかたくさんの人に囲まれていて、フィオナは身の危険を感じた。オスニエルも状況に気づき、人を押しのけてこちらに向かおうとしているのが見えた。



