8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

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 フィオナが、オスニエルの部屋につくと、ロジャーがにこやかに迎え入れてくれた。

「フィオナ様、お久しぶりでございます」
「まあ、ロジャー様、ご苦労様。お疲れになったでしょう」
「もったいないお言葉です。いやあ、これですよ、オスニエル様! ねぎらいとはこういうものです!」
「うるさい」

 テンションの上がるロジャーに、オスニエルはぶっきらぼうに答える。

「こっちにこい、フィオナ」

 執務机とは別に、小テーブルが用意されていて、すでにお菓子が置かれていた。どうやら、休憩がてら話を聞いてくれるつもりらしい。
 ロジャーが侍女にお茶を頼みに行き、しばしふたりきりになる。

「すみません、本当は昨晩お話しようと思っていたのですが」
「気にするな。アイラがお前から離れなかったとドルフから聞いている」

 オスニエルは、顔色を確認するようにフィオナの顎を持ち上げる。

「疲れてはないな?」
「あ、はい。大丈夫です。それで、あの。お伺いしたかったのはジャネット様のことです」

 フィオナがおずおずと話し出すと、オスニエルが焦ったように、前のめりになった。

「先に言っておくが、彼女とはなにでもないからな。お前はいったい、誰になにを聞いたのだ?」
「聞いたというか、先ほどご本人にお会いしました」
「は?」
「偶然です。城内に滞在されているのですもの、そういうこともあります」

 フィオナは、先ほどの一部始終をオスニエルに話す。香水を王都で広めたいと言っていたと告げれば、オスニエルが口をはさんできた。

「彼女の第一目的はそれだ。いずれ幹線道路が完成したあかつきには、ロイヤルベリー家がこれまで手出しができなかった西方諸国とのやり取りも可能になるだろう。その前に、まずは王都でロイヤルベリーの香水を、名が通るほど浸透させておきたいのだろう。王家の承認を得たという名目や王都の承認の伝手も欲しいのだろうしな」