* * *
フィオナと別れた後、ローランドを連れてエリオットが部屋に戻ろうとすると、客用サロンの前で呼び止められた。
「エリオット様、でしたかしら?」
「ええ。ロイヤルベリー公爵令嬢。先ほどはどうも」
ジャネットがサロン部屋の前でたたずんでいる。
「よろしかったらお茶でもいかがですか? 私、今日は予定が空いていて、誰かとお話ししたいと思っていましたの」
「では、少しだけ」
エリオットはにっこりと微笑み、提案を受け入れる。
サロン部屋には、お菓子がいくつも並べられていた。もともと誰かが来る予定だったのかもしれない。侍女が数名いて、エリオットのことを興味深そうに見ている。
「これは食用の花を混ぜ込んだマドレーヌですの。乾燥させた花を持ってきたので、料理長にお願いして焼いてもらったのですよ」
ジャネットはゆったりとした動作でエリオットの向かいに座った。
ローランドはエリオットのうしろでたたずみながら、彼女の様子を観察していた。
さすが大国の公爵令嬢なだけあって、立ち居振る舞いが美しい。背筋はぴんと伸び、一緒にいる侍女も隙のないふるまいで給仕をしている。
「フィオナ様にも男兄弟がいらっしゃるのね。私もそうなのですよ、いるのは兄ですが。エリオット様は、大学ではなにを学ぶのです?」
「私は美しいものに目がなくて。建築美術や造形美術に興味があるのです。王位を継ぐのに直接必要のない学問ですが、数年間だけならと許可を得てきたのです。父の説得にはオスにセル様も協力してくださって」
ほくほくと満面の笑みのエリオットを、ジャネットは口元だけに笑みを浮かべて聞いている。
「まあ、オスニエル様がそんなことを?」
「ええ。私の恩人です」
時折、風にとってジャネットの香水が漂う。ローランドはだんだん、胸がざわついてきた。
「珍しいこともあるものね。戦争一辺倒だった方が、文化や教育に力を入れだすなんて」
「そうなのですか? 私は、オスニエル様は知識も豊富で教養のある方だと思っていましたが」
フィオナと別れた後、ローランドを連れてエリオットが部屋に戻ろうとすると、客用サロンの前で呼び止められた。
「エリオット様、でしたかしら?」
「ええ。ロイヤルベリー公爵令嬢。先ほどはどうも」
ジャネットがサロン部屋の前でたたずんでいる。
「よろしかったらお茶でもいかがですか? 私、今日は予定が空いていて、誰かとお話ししたいと思っていましたの」
「では、少しだけ」
エリオットはにっこりと微笑み、提案を受け入れる。
サロン部屋には、お菓子がいくつも並べられていた。もともと誰かが来る予定だったのかもしれない。侍女が数名いて、エリオットのことを興味深そうに見ている。
「これは食用の花を混ぜ込んだマドレーヌですの。乾燥させた花を持ってきたので、料理長にお願いして焼いてもらったのですよ」
ジャネットはゆったりとした動作でエリオットの向かいに座った。
ローランドはエリオットのうしろでたたずみながら、彼女の様子を観察していた。
さすが大国の公爵令嬢なだけあって、立ち居振る舞いが美しい。背筋はぴんと伸び、一緒にいる侍女も隙のないふるまいで給仕をしている。
「フィオナ様にも男兄弟がいらっしゃるのね。私もそうなのですよ、いるのは兄ですが。エリオット様は、大学ではなにを学ぶのです?」
「私は美しいものに目がなくて。建築美術や造形美術に興味があるのです。王位を継ぐのに直接必要のない学問ですが、数年間だけならと許可を得てきたのです。父の説得にはオスにセル様も協力してくださって」
ほくほくと満面の笑みのエリオットを、ジャネットは口元だけに笑みを浮かべて聞いている。
「まあ、オスニエル様がそんなことを?」
「ええ。私の恩人です」
時折、風にとってジャネットの香水が漂う。ローランドはだんだん、胸がざわついてきた。
「珍しいこともあるものね。戦争一辺倒だった方が、文化や教育に力を入れだすなんて」
「そうなのですか? 私は、オスニエル様は知識も豊富で教養のある方だと思っていましたが」



