8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

「……オスニエル様に会いに行くの。行ってくるわね」
「ああ、姉上。入寮手続きが進んでおりまして、一週間後には入れることになりました」
「そう。ほかに必要なものはない? 私からお祝いとして贈るから、まとめて教えてくれる?」
「はい。ありがとうございます」

 エリオットはやわらかく微笑んで頭を下げ、ローランドは痛ましげな視線をフィオナに向け続けていた。
 同情されているのも居心地が悪く、無意識に早足になってしまった。あとをついてきているポリーが少し小走りになっている。

「ごめんなさい。ポリー、早かったわね」
「いいえ。大丈夫です」
「……ねぇ、ポリー。ジャネット様のこと、どう思った?」

 ぽそりというと、ポリーは遠慮がちにフィオナを見ながらも、淡々と話し出した。

「お綺麗で、さすがの公爵令嬢という気品のある方ですね。ジャネット様の香水も、私は売れると思います」
「そうね。いい香りだったわ」
「貴族女性はもともと、香りの強いものがお好きな傾向にあります。これまでの香水よりも香りが強く、存在感を示すのにはもってこいですから」
「……でも、それをみんなが付けたら大変じゃないの?」
「たしかに混ざったら悲惨なことになりますね。同じ香りで揃えられるのならいいのでしょうけど」
「そうね」

 フィオナの頭にいろいろと思いつくことはあったが、口には出さなかった。
 香水はジャネットが売り出そうとしているものだ。口を挟んで混乱させるのはよくないだろう。