フィオナが上半身を起こしたままベッドの中央に座り、両脇からアイラとオリバーに膝枕をする。アイラは、フィオナの膝に顔をこすりつけるようにしてうずくまった。
「らー、こわい、みえる」
オリバーがフィオナの腰に手をまわし、ポソリと言った。
「オリバー、なにかわかるの?」
「らー、みえる」
「ラーミエル?」
聞いたことのない名前だ。フィオナはなんのことだか分からず、首をかしげる。
「アイラ、大丈夫?」
「うん。かーたまといっしょだから、へーき。ドルフ、いるし」
不意にドルフのことを話題に出され、フィオナは彼に話しかける。
「ドルフ、アイラが言っていること分かる?」
それまで子犬姿だったドルフは、聖獣姿に戻ると、ベッドの上に乗ってきた。
アイラの首のあたりに鼻先をつけ、クンクンとにおいを嗅ぐ。
『……おそらくだが、人ならざるものを感知しているみたいだな』
「人ならざる者って……ドルフたちみたいな聖獣ってこと?」
『それだけじゃないな。思念の塊とか、普通の人間には見えないが、確実に存在するものなんかもだろう』
「幽霊ってこと?」
フィオナもぞっとする。ここは権謀術数渦巻く王城であり、後宮だ。暗殺や謀殺なども、普通の場所よりは行われているはずだ。幽霊なんて、数知れないほどいるのではないだろうか。
「こ、怖い!」
フィオナががばっと布団をかぶると「きゃーっ」と子供たちがはしゃぎはじめる。
「かーたまといっしょ!」
「しょ!」
ぎゅうぎゅうに抱き着かれて、布団の中はだんだんホカホカになってくる。
怖がっていたはずなのに、子供ふたりの体温で温められ、フィオナもいつしか眠りについていた。



