8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2


 フィオナが上半身を起こしたままベッドの中央に座り、両脇からアイラとオリバーに膝枕をする。アイラは、フィオナの膝に顔をこすりつけるようにしてうずくまった。

「らー、こわい、みえる」

 オリバーがフィオナの腰に手をまわし、ポソリと言った。

「オリバー、なにかわかるの?」
「らー、みえる」
「ラーミエル?」

 聞いたことのない名前だ。フィオナはなんのことだか分からず、首をかしげる。

「アイラ、大丈夫?」
「うん。かーたまといっしょだから、へーき。ドルフ、いるし」

 不意にドルフのことを話題に出され、フィオナは彼に話しかける。

「ドルフ、アイラが言っていること分かる?」

 それまで子犬姿だったドルフは、聖獣姿に戻ると、ベッドの上に乗ってきた。
 アイラの首のあたりに鼻先をつけ、クンクンとにおいを嗅ぐ。

『……おそらくだが、人ならざるものを感知しているみたいだな』
「人ならざる者って……ドルフたちみたいな聖獣ってこと?」
『それだけじゃないな。思念の塊とか、普通の人間には見えないが、確実に存在するものなんかもだろう』
「幽霊ってこと?」

 フィオナもぞっとする。ここは権謀術数渦巻く王城であり、後宮だ。暗殺や謀殺なども、普通の場所よりは行われているはずだ。幽霊なんて、数知れないほどいるのではないだろうか。

「こ、怖い!」

 フィオナががばっと布団をかぶると「きゃーっ」と子供たちがはしゃぎはじめる。

「かーたまといっしょ!」
「しょ!」

 ぎゅうぎゅうに抱き着かれて、布団の中はだんだんホカホカになってくる。
 怖がっていたはずなのに、子供ふたりの体温で温められ、フィオナもいつしか眠りについていた。