8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

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 数日後、フィオナはステイシーに会いに、アリンガム侯爵邸を訪れていた。

「ご無沙汰しております。ステイシー様」
「フィオナ様、お元気でしたか? ご足労おかけして申し訳ありません。私の方が出向かなければなりませんのに」

 ステイシーは、現在妊娠中である。安定期であり、動いても支障はないが、なにかあっては心配なので、フィオナはポリーとカイを伴って出てきたのである。

「お話があるということでしたけど、どうかなさいました?」
「どうかもなにもないですわ。今ジャネット様が城に来ているというじゃありませんか。フィオナ様、オスニエル様となにかありました?」
「いいえ?」

 どうやら、ジャネットのことは屋敷に引きこもっているステイシーにも伝わっているらしい。
 フィオナは、オスニエルにジャネットのことを確認したときのことを思い出す。
 彼は少し気まずそうな微妙な顔をしていて、『挨拶はしなくてよろしいでしょうか』と相談すると、『しなくていい』とそっけなく言われてしまった。
 どこかぎこちないのは、やましいところがあるからだろうか……などど邪推しつつ、問いただすこともできずにいた。

 ステイシーは、顔を近づけ、耳打ちする。

「フィオナ様、油断してはいけませんわ。ジャネット様はかつてオスニエル様の縁談相手でもありましたの。少なくとも陛下はとてもお気に入りでした。たしかあのときは、オスニエル様が結婚する気はないと言って破談になったのだったと思います」

 もう十年近く前の話だという。今オスニエルが二十九歳だから、十九歳くらいの頃だろうか。王族であれば適齢期だと言える。

「そうなのですか?」
「ええ。それを聞いて、私、絶対オスニエル様との縁談が来ないでほしいって思いましたもの……ってああ、すみません」

 ミルズ侯爵家も家柄としては十分だ。当時ステイシーは十歳くらいだから、関係のない話だろうが、オスニエルが縁談を断り続ければ、お相手の年齢層は下がっていく。いつしか自分にも話が回ってくるかもしれないと、ステイシーは危惧していたのだろう。