8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

 そして、ジャネットを呼んでくれる令嬢たちは、多少なりフィオナ妃に反感があるのだろう。ジャネットを中心として対抗勢力を作りたいという思惑が見て取れる。

(浅はかね。大したうしろ盾を持たない側妃が正妃になったのだから、オスニエル様の寵愛があの方に向いているのはあきらかなのに。下手に手を出して、潰されるのはどちらかしら)

 とはいえ、ジャネットには国王の後押しもある。寵愛を期待せず、側妃としてもぐり込むくらいならば、できないことはないだろう。

(まあ、こちらも利用させていただきましょう)

 ジャネットはにっこりと微笑み、小さな小瓶を幾つも取り出した。

「私、ぜひ、この香水を王都でも広げて行きたいのです。ですから今日は、皆さんに少しずつお分けいたしますわね」
「まあ、よろしいのですか?」
「ええ。お近づきのしるしに。お気に召していただけたら、購入していただけたらうれしいわ」

 ジャネットは香水を渡していく。女性たちは指先に数滴つけ、耳のうしろや手首につけ、満足気にしている。
 百合の気品ある香りが、周囲に広がった。

「いい香りですわね」
「ええ。なんだか気分が高揚してまいりましたわ」

 頷きあう令嬢たちを眺めながら、ジャネットは歌うようにささやく。

「今度、陛下が歓迎の宴を開いてくださいますの」
「まあ、国王様主催で? 凄い。さすがはジャネット様ね」
「その時はぜひつけてきてくださいね。私たちがお友達であるしるしですから」
「もちろんですわ!」

 微笑み喜ぶ女性たちを見て、ジャネットは緩んでしまう口もとを扇で隠す。
 フィオナ妃は、あまり社交上手ではないようだ。女性の味方を得るのが、こんなにも簡単だとは。