「私は、時間をやり直させてもらったから、大丈夫です。もちろん最初は憎んでいましたけど。貴方は前だけを見る不器用な方ですが、全然話を聞いてくれないということはありません。今まで、小さなことに目を止めることが少なすぎたのです。だからきっと、謝罪しなければならないことも多いでしょう。私も一緒に謝ります。貴方の妻ですから」

 オスニエルは泣きそうな顔をして、フィオナを抱きしめる。

「……許してくれるのか」
「ずいぶん前に許していますよ。貴方のことを理解していなかったのは、私も一緒です。私たちはお互いに、歩み寄ることが必要だったのです。それができたから、今があるんでしょう?」

 オスニエルの中に凝り固まっていた気持ちが少しずつ溶けていく。

「ジャネット様のこと、一緒に考えましょう。最初にあなたが彼女を傷つけたことも、きちんと謝ってください」
「ああ」
「夫を失って、悲しくてああなってしまったのです。どうか、一方的に責めるのだけはやめてください」
「……わかった」

 話し合うこと、許し合うこと、そのどれもが、大切でいとおしい。
 踏みにじってきた過去も、フィオナと一緒なら向き合える。もう一度、やり直すこともできる。オスニエルにはそんな風に思えた。

  *  *  *

 目が覚めた時、ジャネットは客室で眠っていた。
 人はおらず、ひとりだ。窓から差し込む光は、やや赤い。もう夕暮れ時なのだろうか。
 ジャネットは目をつぶり、不思議な体験をさせてくれたフィオナのことを思い出す。
 夫の姿や声を見せてくれた不思議な力。そして、彼女の子供たちが発した光に包まれた時、ジャネットは浄化されたような気がしたのだ。

「ユーイン様、本当に私のそばにいるの?」

 残念ながらジャネットには、不思議な力はなにもない。声も聞こえなければ、気配を感じることもできない。
 なんの返事もない空間を見ていると、涙が浮かんでくる。