8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

 フィオナが泣きそうになっているのを見て、アイラとオリバーはギュッと抱きしめあった。すると周囲から景色が消え、全員がまばゆい光に包まれた。

『ジャネット』

 声は、すぐ近くから聞こえた。ジャネットのうしろに、金色の光に包まれた青年の影が見える。

「ユー……インさま?」
「聞こえる? ジャネット。僕の声」
「き、聞こえます!」

 ジャネットは泣いていた。ユーインの姿をはっきり見たくて、何度も涙をぬぐいながら、青年の影を見つめる。しかし、うしろから発せられる光がまぶしくて、表情まではよく見えない。

「ジャネット。ごめん。君を置いて死んでしまって」

 ゆらりと揺れる影。目を凝らしていくと、その輪郭が少しずつ鮮明になっていく。

「謝るのはこちらです。私が作った香油のせいで、あなたは……」
「君のせいじゃないよ。あれは僕の無謀な判断だった。僕は戦場で、香りで君を感じられるのがうれしかったんだ」
「……恨んではおられないのですか?」
「恨むはずないだろう? 僕は君を愛している。僕の残した花を君が広げてくれるのがうれしい」

 ジャネットは目を瞬かせる。

「……本当?」
「ああ。ただ君には、華やかで明るい気分になる香りが似合うと思う。ジャネット。僕は、君が泣いている姿は見たくないんだ。守ってあげられなかったふがいない僕を許してくれるのなら、どうか幸せになってほしい」

 表情がはっきり確認できるくらい鮮明になったユーインが微笑む。
 しかしやがて、光が弱くなってきたかと思うと、姿自体も見えなくなっていく。

「待って。ユーイン。私あなたに言っていないことがあるの。もうずっと、あなたが慰めてくれたあの日から、オスニエル様よりずっと、あなたのことが大好きだったって」

 光の塊になったユーインが、軽く揺れてジャネットの肩に乗った。
 まるで頬にキスをされたような、そんな感覚が訪れ、ジャネットの目から涙があふれる。

「行かないで、ユーイン様」
「ごめんね。ジャネット、幸せに……」

 最後のほうはよく聞き取れないくらい小声になっていた。

「う……うう」

 うなだれるジャネットの背を、フィオナが支えた瞬間、双子が手を握り合いながら、ふらりと倒れる。

「も、むりぃ」
「ね……む、たい」
「アイラ! オリバー!」

 フィオナはふたりを抱きとめて、ドルフを見た。
 彼は頷き、「元の時間に戻るぞ」と叫んだのだった。