8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2


(彼が、こんなにもオスニエル様のことを気にしていたなんて……)

 言葉の端々に、オスニエルに対抗するような言葉が隠れている。ユーインが抱えていたコンプレックスに、当時は気づいてもいなかった。

『君が僕の、一生枯れない花だよ、ジャネット』

 甘い言葉を残して、景色が変わる。


 次にたどり着いたのは、戦場だ。
 鎧をまとったユーインが騎乗したまま、川の向こうを眺めている。

『膠着状態だな』

 東方には小国が多くあり、それを一国ずつ侵略していった。すぐに降伏してくる国ばかりではない。どう見ても勝ち目のない戦争に、必死に抵抗していく国もあった。
 そんな時、オスニエルは先陣を切って、敵の大将を討ちに行く。将が落ちれば、あとは続かない。この戦争自体の是非は置いておいて、戦いを早めに収束させるという点において、オスニエルはたしかに有能な将だった。

 一部隊を率いる将として、ユーインは彼に劣ってはならないと思っていた。できるだけ兵の前に立ち、自らの領民を守るのだと。
 しかしもともと温厚な彼にはそれはかなりの精神的疲労だった。馬上ではいつも体が震え、剣を持つ手に力が入らない。

 彼のお守りは、ジャネットが作ってくれた勇気の出る香りだ。
 耳元に塗り、気持ちを高める。怖いものなどないのだと自分に言い聞かせ、剣をふるった。
 やがて戦場の恐怖にも慣れ、一般兵とも親しくなれば、次第に責任感もわいてくる。
 この兵たちの命を預かっている以上、一番うしろで戦果を待つような戦い方はできない。
 ユーインは責任感が強く、あまりにも優しすぎたのだ。