(彼が、こんなにもオスニエル様のことを気にしていたなんて……)
言葉の端々に、オスニエルに対抗するような言葉が隠れている。ユーインが抱えていたコンプレックスに、当時は気づいてもいなかった。
『君が僕の、一生枯れない花だよ、ジャネット』
甘い言葉を残して、景色が変わる。
次にたどり着いたのは、戦場だ。
鎧をまとったユーインが騎乗したまま、川の向こうを眺めている。
『膠着状態だな』
東方には小国が多くあり、それを一国ずつ侵略していった。すぐに降伏してくる国ばかりではない。どう見ても勝ち目のない戦争に、必死に抵抗していく国もあった。
そんな時、オスニエルは先陣を切って、敵の大将を討ちに行く。将が落ちれば、あとは続かない。この戦争自体の是非は置いておいて、戦いを早めに収束させるという点において、オスニエルはたしかに有能な将だった。
一部隊を率いる将として、ユーインは彼に劣ってはならないと思っていた。できるだけ兵の前に立ち、自らの領民を守るのだと。
しかしもともと温厚な彼にはそれはかなりの精神的疲労だった。馬上ではいつも体が震え、剣を持つ手に力が入らない。
彼のお守りは、ジャネットが作ってくれた勇気の出る香りだ。
耳元に塗り、気持ちを高める。怖いものなどないのだと自分に言い聞かせ、剣をふるった。
やがて戦場の恐怖にも慣れ、一般兵とも親しくなれば、次第に責任感もわいてくる。
この兵たちの命を預かっている以上、一番うしろで戦果を待つような戦い方はできない。
ユーインは責任感が強く、あまりにも優しすぎたのだ。



