どんな日にでも朝は来る。
どれだけ苦しい昨日にも、平等に今日はやって来る。

「お、おはようございます!暁先輩っ!」

「あ、おはよう由夢ちゃん」

いつもより少しだけ早く学校へ来た。

今日は朝から生徒会の集まりがあるから。

偶然、階段で暁先輩と会った。

………。

えっと、どうしよ。

なんか…

話した方がいいよね?

昨日のこと…


“…だから笑ってほしくて、こんなことしてるんだ”


これからも私は花絵先輩に笑ってもらうためにリクエストに応えるんだろうか。

あれ、なんかそれは…

「由夢ちゃん知ってる?今日はチョコクリームメロンパンの入荷日なんだ」

「え、本当ですか!!!」

一度凛空ちゃんにもらってから案の定ハマってしまい、次の入荷日はいつなんだと山を張っては買いに行ってたけど結局あれから一度も買えたことがなかった。入荷数も少ないレアパンは容易には手に入らなかった。

「え、でもまだ購買空いてないですよね?なんで知ってるんですか?」

「毎月いつ入ってくるかわからないように見えて入荷日は実は規則的なんだよ」

「そうなんですか!全然気づかなかったです!」

日にちも曜日も毎回違ったから購買のおばちゃんの気分で入荷されてるのかと思ってた。決まった日にちがあったなんて、新発見だ。

「今日買えるといいね」

「はい!絶対お昼休みすぐに購買行きます!…って、なんで私がチョコクリームメロンパン買いたいと思ってるの知ってるんですか!」

「俺に知らないことはないんだよ」

にこりと笑った暁先輩はいつもと変わらない暁先輩だった。

ちくしょう、カッコいい。

あんなに凹んだのに、まだときめいてしまう。

………。

「由夢ちゃん?」

「あ、すみません!」

立ち止まる私に暁先輩が振り返った、階段の少し上から。

数段上から降り注がれる暁先輩の視線。

「どうしたの?」

「ううん、何でもないです」

足を上げる。一歩ずつ階段を上った。

暁先輩の背中を追いながら。

隣に並ぶ勇気がなかった。

生徒会室の前、賑やかな笑い声が聞こえた。

もうみんな揃ってるんだと思った…凛空ちゃんと馬渕先輩と、花絵先輩の声もしたから。

暁先輩のドアを開けようとした手が止まった。


ほんの少しだけ。ほんの少しだったけど、私には伝わってしまって。


すぐに何も気にしない素振りでドアを開けていた。

「おっはよー!今日はいい天気だね~!」

何も変わらない暁先輩。

誰もが知ってる暁先輩。


…なのに。


好きな人に笑ってもらえないってどんな気持ちなんだろう。

寂しいよね。

好きな人にはずっと笑っててほしいよね。

できれば笑いかけてほしいよね。


そう…思うよね。