暁先輩は花絵先輩が好き。






わかってたんだけどなぁ。

頭の中ではわかってたつもりだったんだけどなぁ。

暁先輩から聞くのはこんなに苦しくて痛いんだ。


全然わかってなかった。





ぼぉーっとしたまま家まで帰った。

いろんなことがぐるぐる巡って、でも行きつく先は花絵先輩を想う暁先輩の気持ちで。



私の気持ちは置き去りだった。

この気持ちはどこへ行くの?

どうしたらいいの?

もう簡単に消せるほどお気軽じゃない。



パタンっとドアを閉めた。

暖房のない私の部屋はひどく冷たい。

早くヒーターを点けなきゃ。

早く冷えた体を温めなくちゃ。

なのに全然動けない。

ぺたんっとその場に座り込んだ。

「………。」


さすがに寒い…
やっぱヒーター点けよう。

手を伸ばせばヒーターに届く。
電源ボタンを押そうと、ぐーっと手を伸ばした。


ガシャンっ


「あ、やばっ」

無理な態勢をしようとしたせいでバランスを崩して、隣に置いてある本棚の上にあった小物入れに腕をぶつけてしまった。ひっくり返って中身がバラバラと散らばった。

やっちゃった、大事なもの入れだったのに…

「あ…」

久しぶりに中身を見た。

散らばった中にあった大事にしまいすぎた…あの時のお守りがあった。


“じゃあ俺と交換する?”


嬉しくて、絶対使えないと思って、ずっとここに入れっぱなしだった。

もう必要なくなっちゃったけど。



私の春は永遠に来ないから。