#青春リクエスション

暁先輩がの手が止まると同時、拍手をした。いっぱい、手が痛くなるほどにパチパチとこの気持ちよ届けという思いで手を叩いた。

「すっごく素敵な曲でした!なんて言う曲なんですか?」

「ん、これ?これはー………ピアノ協奏曲1番変ホ長調“ゆめ”」

ゆめ…、私の曲みたい。

「って、今作ったんだけど」

「え!?」

「てゆーかテキトーに弾いただけだし」

「天才ですか!?暁先輩!!!」

「プロの人が聞いたらめちゃくちゃな音階してるよ」

暁先輩が笑ってる。確かに私に音楽のあれこれなんてサッパリわかんないんだけど。ピアノ弾けないし、楽譜読めないし。
すごい感動的…!と思ってたのに、ケラケラ暁先輩が笑うもんだからどうやらそんな雰囲気ではないらしい。
私の曲みたいって感傷的になってた私とは…

「でもそんなに褒めてもらえるなら今年の体育祭の入場行進にでもしてもらおうかな」

「グランドピアノ伴奏の入場行進なんて聞いたことありませんよ!」

最終的には私も一緒になって笑ってしまったけど。

グラウンドで急に現れたグランドピアノをしゃんと弾く暁先輩の姿とそれに伴って駆け足でアーチをくぐって入場してくるなんて、想像したら可笑しくて笑わないわけない。音楽学校でも真面目に体育祭すると思う。

「ふふふっ」

声が溢れてしまう。

「由夢ちゃんはよく笑うよね」

「暁先輩がいつも笑わせてくれるんですよ」

だから私もいつも笑ってる。


楽しいから、好きだから、暁先輩が。


それだけだったの。


好きな人の好きな人になるのは簡単じゃないんだね。

「…俺の笑ってほしい人はもう何年も笑ったところを見たことがないんだ」

「………え?」