ドアが開いたままだった。
そこから聞こえるメロディ。
パイプ椅子も、マイクスタンドも、横断幕も、何もかもなくなったやたら広く感じる体育館にまだぽつんっと置かれたグランドピアノ。
暁先輩が弾いていた。
しなやかに動く指先と楚々とした表情。
見入ってしまう。
カタッと鳴ってしまった物音に気付いた暁先輩が手を止めてこっちを見た。
「あ、由夢ちゃん」
「すみませんっ、邪魔しちゃって!」
「ううん、暇だから弾いてただけだから」
「…暁先輩、ピアノも出来たんですね!」
「昔ちょっとやってたんだよね」
暁先輩の元へ近付いた。いつもより心臓の音が大きく聞こえていた。
「めちゃくちゃ感動しました!本当に何でも出来るんですね!」
脱いだ制服がおざなりに床に落ちている。暁先輩が袖を捲り直した。
「じゃあ、もう1曲やっちゃおうかな!」
そう言ってペロッと下を出し、両手を上げる仕草を見せた。どれだけ豪快なメロディが流れてくるんだろうとその姿にふふっと笑っていると、それとは裏腹にまるで子供を撫でるようななめらかなタッチで鍵盤を弾き始めた。
「………。」
キレイ。
桜なんかなくてもやっぱりキレイだ。
なんて繊細な曲なんだろう。
新入生歓迎会で聞いた曲とはまた違う曲で、暁先輩によく似合ってる。
暁先輩が光ってるみたい。
あぁ、好き以外に答えが見つからない。
そこから聞こえるメロディ。
パイプ椅子も、マイクスタンドも、横断幕も、何もかもなくなったやたら広く感じる体育館にまだぽつんっと置かれたグランドピアノ。
暁先輩が弾いていた。
しなやかに動く指先と楚々とした表情。
見入ってしまう。
カタッと鳴ってしまった物音に気付いた暁先輩が手を止めてこっちを見た。
「あ、由夢ちゃん」
「すみませんっ、邪魔しちゃって!」
「ううん、暇だから弾いてただけだから」
「…暁先輩、ピアノも出来たんですね!」
「昔ちょっとやってたんだよね」
暁先輩の元へ近付いた。いつもより心臓の音が大きく聞こえていた。
「めちゃくちゃ感動しました!本当に何でも出来るんですね!」
脱いだ制服がおざなりに床に落ちている。暁先輩が袖を捲り直した。
「じゃあ、もう1曲やっちゃおうかな!」
そう言ってペロッと下を出し、両手を上げる仕草を見せた。どれだけ豪快なメロディが流れてくるんだろうとその姿にふふっと笑っていると、それとは裏腹にまるで子供を撫でるようななめらかなタッチで鍵盤を弾き始めた。
「………。」
キレイ。
桜なんかなくてもやっぱりキレイだ。
なんて繊細な曲なんだろう。
新入生歓迎会で聞いた曲とはまた違う曲で、暁先輩によく似合ってる。
暁先輩が光ってるみたい。
あぁ、好き以外に答えが見つからない。



