「それでは次に我が校の生徒会長より挨拶です」
暁先輩が階段を上ってステージに上がり、演壇の前に立った。一度お辞儀をしてゆっくり話出した。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。愛和高校3年生徒会長の野木暁です」
それと同時揺れる体育館。
何度聞いただろうかこの歓声を、暁先輩がステージに上がればもれなく湯水のように溢れてくる黄色い歓声たちを。
そうなのだ、元々暁先輩には生まれながらにして持っているものがある。何もしなくても暁先輩には人を呼び寄せちゃう魅力がある。
だから青春リクエスションが成り立つわけで。
一通り話し終えた暁先輩はおもむろに階段を下りた。
そして向かった先はその下に置いてあったグランドピアノの前…
え、ピアノ???
静かにピアノの前に置かれた椅子に座り、制服を脱いでシャツの袖を捲った。
え……
えぇぇ…っ
スッと鍵盤に置かれた指から流れ始める耽美なメロディ。
………。
私の語彙力じゃ何も言い表せれない。
何コレ、何なのコレ…
暁先輩、ピアノも弾けたんですか!!!?
えーーーーーー!
めっちゃくちゃカッコいいーーーーーー…っ!!!
わ、やばい。
どうしよう。
写真撮りたい。
そんなのダメってわかってるけど、こそっと撮ったらわかんないかな、あのえっと…
ドッと心臓が鳴る。目が話せない。
「ぃずみ、井住!」
「え?」
なのに馬渕先輩に呼ばれて目を離せざる得なくなった。
「井住のし・ご・と!!」
「え、あぁっ!」
今か、このタイミングなんだ…!
私の本日唯一の仕事。
危ない、若干忘れてた。
急いで中島先生の隣に移動し、さりげなくソッと聞こえるように言った。
「“外からなんか音が聞こえますね”」
これは一体何なのか、暁先輩の音以外耳に入れたくないのに。
中島先生は顔をしかめながら、ドアの方に耳を澄ませた。
「…ん、なんかドンドン言ってますね。なんだろ?」
私も同じように耳を澄ませてみた。力強くドンドン叩くような音が聞こえる。
え、本当に聞こえるじゃん!
私と顔を見合わせた中島先生がゆっくりドアに手をかけた。あまりの激しい音に危機を感じたのか、引き戸のドアをグッと引いた。
ぶわっ
とその瞬間桜の花びらが舞うように流れ込んでた。
外は春の嵐、一斉に入り込む風と大量の花びらたち。
「!?」
ざわざわし出す体育館に、慌てて閉めようと思った中島先生だけど風が強くてドアが動かなかった。
風が流れ込むたびに花びらも入り込んでくる。
あぁぁぁぁっ、これどうしたらいいんだろう!?このあと私は何したらいいの!?あのセリフを言う以外聞いてないんだけど、段取り何…!?
テンパる私と中島先生のもとに、他の先生たちも集まってきた時だった。
ダンッ、とピアノから力強い音が響いた。
振り返って音のする方を見た。
私も中島先生も、先生たちも生徒たちも。
みんなの視線が暁先輩に変わった瞬間、今度はピアノの音が止まった。
そして静かにメロディが流れ始めた。
「あ…」
暁先輩のしなやかな指先から奏でられる柔らかなメロディ、そこへ降り注ぐように桜の花びらがヒラヒラと舞う。
暁先輩を包み込みように、まるで桜の精霊なんじゃないかって思うぐらい美しくて、キレイで、見入ってしまった…。
“ドッと増えるド派手な仕掛けやりたいでしょ”
暁先輩は底なしだ。
こんなのずるい。
嫌にでもドキドキしちゃうじゃん。
見てる人全員が思ってるよ。
新入生たちもこれから始まる新生活にドキドキしてる。
春に思いを馳せてる。
春に期待してる。
すてきな春が来たって思ってる。
あの時もそうだった。
暁先輩、私のこの気持ちはどうしたらいいですか?
暁先輩が階段を上ってステージに上がり、演壇の前に立った。一度お辞儀をしてゆっくり話出した。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。愛和高校3年生徒会長の野木暁です」
それと同時揺れる体育館。
何度聞いただろうかこの歓声を、暁先輩がステージに上がればもれなく湯水のように溢れてくる黄色い歓声たちを。
そうなのだ、元々暁先輩には生まれながらにして持っているものがある。何もしなくても暁先輩には人を呼び寄せちゃう魅力がある。
だから青春リクエスションが成り立つわけで。
一通り話し終えた暁先輩はおもむろに階段を下りた。
そして向かった先はその下に置いてあったグランドピアノの前…
え、ピアノ???
静かにピアノの前に置かれた椅子に座り、制服を脱いでシャツの袖を捲った。
え……
えぇぇ…っ
スッと鍵盤に置かれた指から流れ始める耽美なメロディ。
………。
私の語彙力じゃ何も言い表せれない。
何コレ、何なのコレ…
暁先輩、ピアノも弾けたんですか!!!?
えーーーーーー!
めっちゃくちゃカッコいいーーーーーー…っ!!!
わ、やばい。
どうしよう。
写真撮りたい。
そんなのダメってわかってるけど、こそっと撮ったらわかんないかな、あのえっと…
ドッと心臓が鳴る。目が話せない。
「ぃずみ、井住!」
「え?」
なのに馬渕先輩に呼ばれて目を離せざる得なくなった。
「井住のし・ご・と!!」
「え、あぁっ!」
今か、このタイミングなんだ…!
私の本日唯一の仕事。
危ない、若干忘れてた。
急いで中島先生の隣に移動し、さりげなくソッと聞こえるように言った。
「“外からなんか音が聞こえますね”」
これは一体何なのか、暁先輩の音以外耳に入れたくないのに。
中島先生は顔をしかめながら、ドアの方に耳を澄ませた。
「…ん、なんかドンドン言ってますね。なんだろ?」
私も同じように耳を澄ませてみた。力強くドンドン叩くような音が聞こえる。
え、本当に聞こえるじゃん!
私と顔を見合わせた中島先生がゆっくりドアに手をかけた。あまりの激しい音に危機を感じたのか、引き戸のドアをグッと引いた。
ぶわっ
とその瞬間桜の花びらが舞うように流れ込んでた。
外は春の嵐、一斉に入り込む風と大量の花びらたち。
「!?」
ざわざわし出す体育館に、慌てて閉めようと思った中島先生だけど風が強くてドアが動かなかった。
風が流れ込むたびに花びらも入り込んでくる。
あぁぁぁぁっ、これどうしたらいいんだろう!?このあと私は何したらいいの!?あのセリフを言う以外聞いてないんだけど、段取り何…!?
テンパる私と中島先生のもとに、他の先生たちも集まってきた時だった。
ダンッ、とピアノから力強い音が響いた。
振り返って音のする方を見た。
私も中島先生も、先生たちも生徒たちも。
みんなの視線が暁先輩に変わった瞬間、今度はピアノの音が止まった。
そして静かにメロディが流れ始めた。
「あ…」
暁先輩のしなやかな指先から奏でられる柔らかなメロディ、そこへ降り注ぐように桜の花びらがヒラヒラと舞う。
暁先輩を包み込みように、まるで桜の精霊なんじゃないかって思うぐらい美しくて、キレイで、見入ってしまった…。
“ドッと増えるド派手な仕掛けやりたいでしょ”
暁先輩は底なしだ。
こんなのずるい。
嫌にでもドキドキしちゃうじゃん。
見てる人全員が思ってるよ。
新入生たちもこれから始まる新生活にドキドキしてる。
春に思いを馳せてる。
春に期待してる。
すてきな春が来たって思ってる。
あの時もそうだった。
暁先輩、私のこの気持ちはどうしたらいいですか?



