そもそも“全国高等学校新体操選抜大会なんかなくなればいいのに”だなんて、誰が思ったんだろう?
そんなこと呟いたって大会はなくなるわけじゃないし、寧々のせいにして何が言いたかったんだろう?
一体何を…
……。
………。
…。
「すみません、ちょっといいですか?」
「え、なに?」
もうすぐ部活が始まる。
体育館に向かう途中の中庭の渡り廊下、声を掛けて引き留めた。
ポニーテールにした長い髪が揺れる。
「百枝先輩」
「…!」
制服のポケットからスッとスマホを取り出した。
「あなたが寧々のフリをしてSpeaksに呟いたんですよね?」
あの画面、“全国高等学校新体操選抜大会なんかなくなればいいのに”と呟かれたページを見せながら。
「違いますか?」
「…っ、誰あんたっ」
「1年の井住由夢ですっ!」
あんな詳しく大会名を言える人は新体操部に入っている人かそれに関わっている人ぐらいしかいない。
そしてその大会に出るはずだった寧々が怪我をして出られなくなったことを知ってる人。
でもなんで寧々が出られなくなったことを恨む呟きをしたのかはよくわからなかった。
もし1年の寧々がレギュラーになって疎ましく思っていたなら、出られなくなったのは好都合だと考えるはず。
なのにそんなことは一切思っていなさそうだった。
じゃあ寧々が出られなくなって困る人は誰なのか…
「補欠からレギュラーになった百枝先輩しかいませんよね?」
「…っ」
偶然にも自分に回って来たチャンスを、喜ぶ人もいればそうでない人もいる。
「百枝先輩は本当は大会に出たくなかったんですよね?」
「…違うけどっ」
「逃げないでください!こんなことしといて逃げるのはずるいです!ルール違反です!」
ポニーテールにした長い百枝先輩の髪が揺れる後ろ姿、立ち止まってゆっくり振り返った。
「…、あんたが青春リクエスションやってる人なの?」
「…今それは関係ないです」
「関係あるでしょ。だって特定しないんじゃなかったっけ?ルールに違反してるのはそっちでしょ!」
すぅーっと大きく息を吸った。
全部吐き出すように叫んだ。
「私青春リクエスションとは無関係なんで!私は近澤寧々の親友の井住由夢です!!」
“親友の由夢ちゃんなら出来るんじゃない?”
「寧々に謝ってください!!!」
私にできることはやっぱりそんなになくて、これが正解なのかもわからない。
だけど、一生懸命がんばってる寧々の邪魔をするようなことしないでほしい。
私の親友傷付けるようなことしないでほしい…!
「由夢っ、もういいよ!」
「寧々…っ」
ぎゅっと腕を掴まれ引き留められた。
「由夢、声大きいから」
「え、あ、ごめんっ」
「ごめんなさい、百枝先輩。もうすぐ部活ですよね」
ぎゅっと私の腕を掴んだまま寧々が言った。
寧々が謝ることないのに。
「…ゎたしだってっ」
俯いた百枝先輩のグーにした両手がふるふると震えているのが分かった。
「私だって近澤さんの代わりに出たくなんかないんだから!」
私に負けなぐらいの大声で叫んだ。
それには寧々と一緒にビクッてなった。
「比べられて、みんなに近澤さんのがよかったって言われて!どーせ私の方が下手だし、失敗してみんなに迷惑かけるぐらいなら…っ」
涙目ではぁはぁを肩を震わせる。
百枝先輩にも百枝先輩の思うことがあって、だけどそれを寧々のせいにしちゃいけない。
そんなのは間違ってるから。
「じゃあ出るのやめたらいいんじゃないですか?」
「え、寧々!?」
「先輩の代わりも他にいますよ」
自分にストイック寧々、先輩に対してもドライに部活論を語っていた。
いや、だけどそれは言い過ぎじゃない?
また変な呟きされちゃう…よ?
「でも選ばれたのが百枝先輩だったんです。それは百枝先輩の実力ですよ、しっかりやってください」
寧々はもしかして最初から誰が犯人だったのかわかっていたのかな。わかっててわざと何も言わなかったのかな。
寧々は新体操も、部活も、先輩のことも好きなんだよね。
「…出るから!出てやるから!絶対…っ、近澤さんの分もやってやるから!」
「たくさんサポートさせて頂きます」
やっぱり犯人特定なんてするもんじゃなかったのかもしれない。
私のしたことは合っていたのかな。
そんなこと呟いたって大会はなくなるわけじゃないし、寧々のせいにして何が言いたかったんだろう?
一体何を…
……。
………。
…。
「すみません、ちょっといいですか?」
「え、なに?」
もうすぐ部活が始まる。
体育館に向かう途中の中庭の渡り廊下、声を掛けて引き留めた。
ポニーテールにした長い髪が揺れる。
「百枝先輩」
「…!」
制服のポケットからスッとスマホを取り出した。
「あなたが寧々のフリをしてSpeaksに呟いたんですよね?」
あの画面、“全国高等学校新体操選抜大会なんかなくなればいいのに”と呟かれたページを見せながら。
「違いますか?」
「…っ、誰あんたっ」
「1年の井住由夢ですっ!」
あんな詳しく大会名を言える人は新体操部に入っている人かそれに関わっている人ぐらいしかいない。
そしてその大会に出るはずだった寧々が怪我をして出られなくなったことを知ってる人。
でもなんで寧々が出られなくなったことを恨む呟きをしたのかはよくわからなかった。
もし1年の寧々がレギュラーになって疎ましく思っていたなら、出られなくなったのは好都合だと考えるはず。
なのにそんなことは一切思っていなさそうだった。
じゃあ寧々が出られなくなって困る人は誰なのか…
「補欠からレギュラーになった百枝先輩しかいませんよね?」
「…っ」
偶然にも自分に回って来たチャンスを、喜ぶ人もいればそうでない人もいる。
「百枝先輩は本当は大会に出たくなかったんですよね?」
「…違うけどっ」
「逃げないでください!こんなことしといて逃げるのはずるいです!ルール違反です!」
ポニーテールにした長い百枝先輩の髪が揺れる後ろ姿、立ち止まってゆっくり振り返った。
「…、あんたが青春リクエスションやってる人なの?」
「…今それは関係ないです」
「関係あるでしょ。だって特定しないんじゃなかったっけ?ルールに違反してるのはそっちでしょ!」
すぅーっと大きく息を吸った。
全部吐き出すように叫んだ。
「私青春リクエスションとは無関係なんで!私は近澤寧々の親友の井住由夢です!!」
“親友の由夢ちゃんなら出来るんじゃない?”
「寧々に謝ってください!!!」
私にできることはやっぱりそんなになくて、これが正解なのかもわからない。
だけど、一生懸命がんばってる寧々の邪魔をするようなことしないでほしい。
私の親友傷付けるようなことしないでほしい…!
「由夢っ、もういいよ!」
「寧々…っ」
ぎゅっと腕を掴まれ引き留められた。
「由夢、声大きいから」
「え、あ、ごめんっ」
「ごめんなさい、百枝先輩。もうすぐ部活ですよね」
ぎゅっと私の腕を掴んだまま寧々が言った。
寧々が謝ることないのに。
「…ゎたしだってっ」
俯いた百枝先輩のグーにした両手がふるふると震えているのが分かった。
「私だって近澤さんの代わりに出たくなんかないんだから!」
私に負けなぐらいの大声で叫んだ。
それには寧々と一緒にビクッてなった。
「比べられて、みんなに近澤さんのがよかったって言われて!どーせ私の方が下手だし、失敗してみんなに迷惑かけるぐらいなら…っ」
涙目ではぁはぁを肩を震わせる。
百枝先輩にも百枝先輩の思うことがあって、だけどそれを寧々のせいにしちゃいけない。
そんなのは間違ってるから。
「じゃあ出るのやめたらいいんじゃないですか?」
「え、寧々!?」
「先輩の代わりも他にいますよ」
自分にストイック寧々、先輩に対してもドライに部活論を語っていた。
いや、だけどそれは言い過ぎじゃない?
また変な呟きされちゃう…よ?
「でも選ばれたのが百枝先輩だったんです。それは百枝先輩の実力ですよ、しっかりやってください」
寧々はもしかして最初から誰が犯人だったのかわかっていたのかな。わかっててわざと何も言わなかったのかな。
寧々は新体操も、部活も、先輩のことも好きなんだよね。
「…出るから!出てやるから!絶対…っ、近澤さんの分もやってやるから!」
「たくさんサポートさせて頂きます」
やっぱり犯人特定なんてするもんじゃなかったのかもしれない。
私のしたことは合っていたのかな。



